年収156万円未満は企業の保険料負担増の特例案示す
「106万円の壁」撤廃へ 一方で年収156万円未満は企業の保険料負担増の特例案示す(テレビ朝日系(ANN)) – Yahoo!ニュース

厚生労働省は、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃し、短時間労働者の厚生年金加入範囲を広げる方針を示しました。これにより、従来は「従業員51人以上の企業で月額賃金8.8万円以上」という条件が課されていた厚生年金への加入要件が緩和され、2027年には企業規模の制限も撤廃される予定です。さらに、理美容業などの個人事業所にも段階的に適用を拡大し、2030年度までに改正を進める方針が示されました。
一方で、社会保険料負担の増加による手取り収入の減少を懸念する声を受け、厚労省は年収156万円未満の短時間労働者に限り、企業側の保険料負担を増やす特例措置を検討しています。この措置は労使の合意を条件とし、労働者負担を完全にゼロにすることは認められないものの、一定の負担軽減を目的としたものです。ただし、この特例措置は期間限定とされる見込みです。また、企業側への保険料負担を軽減する仕組みも併せて検討されることになりました。
これらの改正により、短時間労働者は将来の年金受給額が増える一方、現時点では手取り収入の減少が生じる可能性があります。関連法案は2024年の通常国会に提出される予定で、社会保険制度の改革が段階的に進められる見通しです。
今回の「年収106万円の壁」撤廃と厚生年金加入条件の緩和は、企業に対して複数の影響を与えると考えられます。まず、従来は対象外だった短時間労働者が厚生年金に加入することに伴い、企業はこれらの労働者に対する社会保険料の負担が増加することになります。特に、中小企業や個人事業所にとっては、この負担の増加が経営コストに直結し、経済的な圧力となる可能性があります。さらに、年収156万円未満の労働者に対する保険料負担割合を企業側に増やす特例措置が導入された場合、企業の財務負担は一層増大します。この特例措置は労使合意を条件としているものの、適用の範囲や条件によっては、労使間の交渉が複雑化し、労働環境の調整が必要になるでしょう。
また、短時間労働者の社会保険加入が義務化されることで、パートやアルバイトを中心とした雇用形態の見直しを余儀なくされる場合があります。これにより、労働時間や賃金体系の調整、さらには雇用契約そのものの変更が求められる可能性があります。一部の企業では、社会保険料負担を回避するため、労働時間を短縮したり、雇用形態を非正規から請負契約などに切り替えるといった対応を取るリスクも指摘されています。一方で、社会保険制度の適用拡大により、従業員の福利厚生が向上することで、長期的には人材確保や従業員満足度の向上につながる可能性もあります。そのため、企業は短期的なコスト増だけでなく、長期的な人材戦略の観点からも、この制度改正に対する対応を検討する必要があります。