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【社労士が解説】有給休暇5日取得義務と取得促進の実務対応|計画的付与制度で解決

年次有給休暇取得促進特設サイト | 働き方・休み方改善ポータルサイト

有給休暇は「義務」から「戦略」へ

2019年の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、毎年5日を必ず取得させることが企業の義務となりました。厚生労働省は10月を「年次有給休暇取得促進期間」と定め、取得率向上に向けた取り組みを強化しています。しかし実際には「業務が忙しくて取れない」「管理職が許可しない雰囲気がある」などの理由から、取得率は依然として伸び悩んでいます。有給休暇の取得促進は、法令遵守だけでなく、採用力・人材定着・生産性向上につながる経営戦略です。


有給休暇の基本ルールをおさらい

有給休暇の付与条件

  • 入社から6か月継続勤務
  • 全労働日の8割以上の出勤

この条件を満たせば、正社員・パートタイマーを問わず有給休暇が付与されます。

付与日数(通常労働者)

勤続0.5年で10日→勤続6.5年以上で20日まで付与。※短時間勤務者は労働日数に応じて付与されます。

5日取得義務のポイント

  • 対象者…新規に10日以上付与されたすべての労働者
  • 取得方法…労働者の請求、会社の時季指定、計画的付与のいずれか
  • 注意点…時間単位年休は義務の5日には算入できない

なぜ有給休暇が取れないのか

社労士として全国の中小企業を支援していると、以下の課題が目立ちます。

  • 管理職が「繁忙期に休まれると困る」と消極的
  • 従業員が「迷惑をかけるから」と取得をためらう
  • 制度はあるが運用が形骸化し、取得率が上がらない
  • 「有給はとって当たり前」という文化が社内に根付いていない

これらの課題は、制度と運用と社内文化の不一致に起因しています。


有給休暇取得促進の解決策

計画的付与制度の導入

「計画的付与制度」とは、労使協定に基づき、付与日数のうち5日を除いた残りを会社が計画的に割り振る制度です。

活用例

  • 夏季・年末年始に組み込んで大型連休を設定
  • 飛び石連休の谷間を有休にして4連休に
  • 業務が落ち着く閑散期にまとめて付与

計画的付与は、繁閑に合わせた業務運営ができ、社員も確実に休めるため、多くの企業で導入が進んでいます。


管理職の評価に「部下の年休」を組み込む

「上司が休ませない雰囲気」を変えるには、管理職の人事評価項目に部下の有給休暇取得率を加えることが効果的です。「休ませることも管理職の役割」と示すことで、現場に浸透しやすくなります。


社員が休みやすい文化をつくる

  • 誕生日や記念日を「アニバーサリー休暇」として必ず休む仕組み
  • 有給を取得した社員の声を社内で共有し、ポジティブな空気を醸成
  • 業務引継ぎ表を標準化し、代替できる体制を確保

小さな工夫ですが、社員の心理的ハードルを下げる効果があります。


取得状況の「見える化」

有給取得促進の第一歩は現状把握です。

  • 勤怠システムやExcelで、付与日・残日数・取得状況を一覧化
  • 基準日から9か月経過時点で「未取得3日以上」の社員を抽出
  • 個別通知や上司面談で取得日を確定

「誰があと何日取らなければならないか」を可視化する仕組みが重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 時間単位の有給で5日義務を満たせますか?
A. できません。義務の5日は「日」または「半日」でカウントします。

Q2. 新入社員で5日を超える有給がない人は?
A. 一斉付与の場合、特別有給や休業手当で対応することが可能です。

Q3. 繁忙期に一斉に休まれると困ります。
A. 計画的付与制度を導入し、繁忙・閑散に応じて交替で取得させることが有効です。


まとめ:有給休暇は法令遵守+経営施策

  • 有給休暇の5日取得は、法律で義務化された最低ライン
  • 計画的付与や見える化で、確実な取得を仕組み化する
  • 管理職評価や社内文化を整え、休みやすい環境をつくる

有給休暇は「コスト」ではなく「投資」です。
取得促進を進めることで、人材定着・採用力・生産性の向上につながります。


社労士からのご提案

自社で「どう運用すればいいのか分からない」「就業規則や労使協定をどのように整備すればよいか不安」と感じる企業も少なくありません。こうした場合には、専門家に相談することが最も効率的で確実です。仙台本社と東京・虎ノ門に事務所を構える社会保険労務士法人ブレインズでは、法改正への対応を踏まえた就業規則や労使協定の作成支援をはじめ、勤怠管理の運用設計、さらに管理職向け研修の実施などを通じて、年次有給休暇の取得促進を「実行できる仕組み」として定着させるサポートを行っています。単なる制度導入にとどまらず、企業ごとの実情に合わせた運用設計までを支援することで、法令遵守はもちろん、人材定着や生産性の向上にもつなげていただけます。

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