
2024年12月2日を境に、医療機関での資格確認は大きく様変わりします。これまでの健康保険証は新たに発行されません。例えば子どもの発熱で夜間に駆け込むとき、高齢の親御さんの定期通院を支えるとき、窓口で「資格確認ができない」と足止めされれば、心身の負担も時間のロスも避けられません。社労士として、私はこの移行を「制度の話」ではなく「受診当日の現実」として捉えることを強く勧めています。大切なのは、従業員本人だけでなく被扶養者を含めた家族全員の準備を済ませておくことです。
マイナンバーカードの健康保険証利用とは
マイナンバーカードを健康保険証として用いる「マイナ保険証」は、カードリーダーにかざし、顔認証もしくは暗証番号で本人確認を行い、その場で加入情報を照合する仕組みです。受付での読み取りが通れば、保険者や保険種別にかかわらず、保険診療としての自己負担で受診できます。医療面の利点も明確です。過去の処方や健診情報が正確なデータとして共有されるため、重複投薬や飲み合わせの危険を避けやすく、慢性疾患の管理や術前評価にも役立ちます。さらに、高額療養費の限度額が自動適用される場合もあり、突発的な入院費負担の心理的不安をやわらげます。ただし、ここで最も誤解が多い要点をはっきりさせます。マイナンバーカードを持っているだけでは健康保険証としては使えません。あらかじめ「健康保険証としての利用登録」を完了させ、カードの電子証明書の有効期限が切れていないことを確認する必要があります。登録が未了のまま受診当日に初めて端末へかざしても、認証が弾かれ、結局は時間をロスするだけですので備えておきましょう。
マイナンバーカードを健康保険証として利用する方法
利用登録の方法は複数あります。スマートフォンやパソコンからマイナポータルへログインして申込みを完了させる方法が最も手早く、役所の窓口やセブン銀行ATMでも完結できます。近年は医療機関や薬局の受付端末でも、その場で登録に進めるケースが増えていますが、初診の緊張や待ち時間の制約の中で新規登録を行うのは、現実的には負担が大きいものです。だからこそ数分の手続きを先にやっておくことが、受診当日の安心に直結します。
従来の健康保険証が新たに発行されなくなったことについて
12月2日以降、従来の健康保険証は新規発行されません。いま手元にある保険証は、有効期限までは使えますが、期限を越えた瞬間から無効になります。多くの方は保険証の有効期限を日常的に意識していません。財布に入れっぱなしで、気づけば期限切れというのが典型です。期限切れの提示は、窓口での確認作業を長引かせ、支払い方法の一時的変更など、当日の動線を重くします。とくに転職や扶養異動、住所変更を伴う時期は、保険者が切り替わるため、旧来の感覚で来院すると「使えるはずが使えない」という事態に陥りやすい。ここまで読んだ今この瞬間に、ご自身とご家族の保険証の有効期限を一度見直してください。マイナ保険証の利用登録をしていない方には、加入する医療保険者から「資格確認書」が自動で郵送されています。これは従来の保険証の代替として機能する公的書類であり、窓口で提示すれば保険診療が受けられます。けれども、保険証のように常時携行する習慣が薄く、封筒のまま保管されて所在不明になるという実務上の課題が目立ちます。資格確認書は存在しているだけでは役に立ちません。すぐに取り出せる場所に保管し、家族の誰でも迷わず出せる状態にしておいてください。
マイナンバーカードを利用できる施設(医療機関・薬局)
マイナ保険証に対応する医療機関・薬局は全国的に広がっています。大規模病院や調剤薬局の多くは対応済みですが、歯科、整骨院、個人経営のクリニックなどは地域差や導入時期のズレが残ります。受診当日に初めて「非対応」を知るのは、患者にとっても医療側にとっても不幸です。かかりつけの医療機関や日常使いの薬局の対応可否は、前日ではなく、今日のうちに電話や公式サイトで確認しておくことを勧めます。玄関先や受付に掲示されている「マイナ保険証 対応」のステッカーは目安になりますが、運用の開始時期や一時停止など細かな事情もあるため、最終的には直接の確認が確実です。
社労士からの実務アドバイス
制度は淡々と進みますが、生活は突然に揺さぶられます。だからこそ、準備は今に限ります。従業員の皆さまには、ご自身のマイナ保険証の利用登録を終わらせ、資格確認書の所在を把握し、家族にも情報を共有してください。
宮城県仙台市/東京都港区虎ノ門 社会保険労務士法人ブレインズ



