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タイミー集団訴訟報道が突きつけた問題

「未払いが130件を超える」と主張 スキマバイト「株式会社タイミー」をワーカー9人が集団訴訟へ(文春オンライン) – Yahoo!ニュース

文春オンラインは、スキマバイトアプリ「タイミー」を利用したワーカー9人が、企業による直前キャンセルに伴う未払いを理由に、130件超・計300万円超を請求する集団訴訟を近く提起する見込みだと報じました。タイミーは2024年7月に東証グロース市場へ上場しており、今回の報道は一企業の個別トラブルというより、急拡大したスポットワークの労務管理そのものが問われている事案として見る必要があります。

問題の本質は契約成立後の使用者都合キャンセルに

この問題を単なるアプリ上の行き違いとして片づけるのは危険です。厚生労働省は、面接等を経ず先着順で就労が決まるスポットワークでは、特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人に労働者が応募した時点で労働契約が成立するものと一般的に考えられると整理しています。つまり、応募完了後のキャンセルは、単なる予約取消しではなく、成立した労働契約を事業主側の事情で履行しなかった問題として扱われやすいのです。実際、タイミーも2025年9月1日以降、従来の「当日チェックイン時に契約成立」という運用から、応募完了時点で解約権留保付労働契約が成立する考え方へ方針を変更しました。そのうえで、契約成立後の使用者からの解約は原則不可とし、解約可能事由に当たらない限り休業手当の支払いが必要だと明示しています。就労開始24時間前を過ぎた後に、仕事量の変化や募集人数の見直し、日時や業務内容の誤りといった使用者側の事情で解約する場合は、休業手当が必要になるという整理です。ここで見落としてはいけないのは、法的には労働契約が成立すれば通常の雇用と同じように賃金、労働時間、休業手当といった基本ルールが問題になります。今回の報道は、「働く直前に止めたのだから大した話ではない」という感覚が法的には通用しにくいことを示しています。

休業手当は少なくとも6割

労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないと定めています。平均賃金は、原則として休業開始前の直前3か月の賃金総額を総日数で割って計算し、日給制や時給制では最低保障額と比較して高い方を用います。スポットワークであっても、この基本構造自体は変わりません。厚生労働省も、労働契約成立後に事業主の都合で丸1日の休業や仕事の早上がりをさせた場合には、労基法26条の休業に当たり、所定支払日までに休業手当を支払う必要があると明示しています。したがって、「実際に働いていないのだから賃金は不要」という説明では足りず、少なくとも休業手当の支払い義務が問題になります。早上がりでも、実際に支払った額が法の下限に届かなければ差額の検討が必要です。さらに実務上は、6割で済むと短絡的に考えない方がよいでしょう。タイミーの事業者向けヘルプは、厚生労働省の案内を踏まえてスポットワーク協会が取りまとめたガイドラインに基づき、休業手当の額を「予定給与額満額」とし、固定交通費も含めた全額を支払う運用にしていると案内しています。つまり、最低基準としての労基法26条だけでなく、プラットフォームの運用ルールまで含めると、企業側の負担は想像以上に重くなり得るのです。社労士の立場から見ると、スポットワークを使う企業が本当に見直すべきなのは、キャンセル時の言い訳ではなく、そもそもの募集設計です。必要人数の見積りが甘いまま求人を出さないこと、就労条件や必要資格を最初から正確に示すこと、当日になって「やはり不要だった」とならない受入体制を整えること。この基本ができていなければ、スキマバイトは便利な採用手段ではなく、未払い賃金と休業手当の火種になります。今回のタイミー集団訴訟報道は、その現実を企業に突きつけたと言えるでしょう。

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