
国税庁から、令和8年分の年末調整で使用する各種申告書が公開されています。令和8年分の年末調整では、所得税の基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得要件などが見直されます。いわゆる「年収の壁」に関係する部分でもあり、従業員本人だけでなく、配偶者、扶養親族、学生アルバイトの子がいる場合の確認が必要になります。国税庁は、令和8年度税制改正により、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正が行われたと案内しています。会社としては、前年の様式や案内文をそのまま使うのではなく、令和8年分の様式に切り替えたうえで、従業員へ早めに周知しておく必要があります。
令和8年分で変更される主な申告書
今回、特に確認しておきたい申告書は、次の2つです。
1つ目は、
「令和8年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です。この申告書では、「基礎控除申告書」と「特定親族特別控除申告書」の控除額の計算表、さらに「配偶者控除等申告書」の判定欄が、改正後の金額に合わせて変更されています。国税庁も、基礎控除額の引上げ等に伴い、前年分から様式を変更していると案内しています。

2つ目は、
「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書」です。こちらは、生命保険料控除欄に、23歳未満の扶養親族を有する場合の特例に対応した記載欄が追加されています。国税庁の事前案内でも、「生命保険料控除」欄について、23歳未満の扶養親族を有する場合の特例に対応した記載欄を追加したとされています。

年末調整の申告書は、従業員が記入するものではありますが、会社側の案内が不十分だと、扶養判定や控除の申告漏れにつながります。特に令和8年分は、単なる様式変更ではなく、控除額や判定金額の変更を伴うため、給与担当者側でも内容を把握しておく必要があります。
扶養判定は「123万円」から「136万円」へ
令和8年分で実務上影響が大きいのは、扶養親族等の所得要件の見直しです。改正後は、扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子などの所得要件が、合計所得金額58万円以下から62万円以下に引き上げられます。給与収入だけの場合の目安では、従来の123万円以下から136万円以下に変わります。これにより、これまで収入面で扶養から外れていた家族が、令和8年分では扶養判定の対象に入るケースが出てくる可能性があります。特に確認が必要なのは、学生アルバイトの子がいる従業員、パート収入のある配偶者がいる従業員、扶養親族の収入が年によって変動する従業員です。また、令和8年分では「特定親族特別控除」に関する確認も必要です。これは、一定の年齢の親族について、所得が扶養控除の範囲を超えた場合でも、所得金額に応じて段階的に控除を受けられる制度です。国税庁の様式にも、特定親族特別控除の記載欄が設けられています。従業員に案内する際は、「配偶者や扶養親族の収入見込みを、前年と同じ感覚で判断しないでください」と伝えておくとよいでしょう。特に給与収入136万円という金額は、令和8年分の年末調整で質問が増えやすい部分です。なお、令和8年度税制改正は、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。そのため、令和8年11月までの源泉徴収事務には変更がなく、令和8年12月以後の年末調整などで変更が生じると国税庁は案内しています。
保険料控除申告書は23歳未満の扶養親族欄を確認
令和8年分の保険料控除申告書では、生命保険料控除欄に、23歳未満の扶養親族を有する場合の記載欄が追加されています。この変更は、23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例に対応するものです。対象となる従業員については、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の計算に影響が出る可能性があります。国税庁は、23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例について、保険料控除申告書の注意書きでも案内しています。ここで注意したいのは、生命保険料控除全体が無条件に増えるわけではないという点です。対象となるのは、23歳未満の扶養親族を有する場合の特例であり、すべての従業員に影響するものではありません。そのため、会社としては、保険料控除申告書を配布する際に、「23歳未満の扶養親族がいる方は、生命保険料控除欄の追加項目を確認してください」と案内しておくと実務上わかりやすくなります。また、令和8年11月30日以前に年末調整を行う場合には、保険料控除申告書裏面の注意書きについて、「62万円以下、給与だけの場合は136万円以下」を、「58万円以下、給与だけの場合は123万円以下」に読み替えて使用する必要があるとされています。通常の12月年末調整とは異なる取扱いになるため、退職者など早期に年末調整を行うケースでは注意が必要です。令和8年分の年末調整は、申告書の見た目だけでなく、扶養判定や控除額の考え方が変わる年です。会社としては、最新様式を使用すること、従業員へ変更点を早めに案内すること、給与計算ソフトや年末調整システムが令和8年分の改正に対応しているか確認することが必要です。社会保険労務士法人ブレインズでは、年末調整そのものの税額計算だけでなく、従業員への案内文の整備、扶養確認の進め方、給与実務に関するご相談にも対応しています。令和8年分は従業員からの質問も増えることが予想されますので、早めの準備をおすすめします。





