
政府と与野党は、社会保障制度の見直しを話し合うため、新たに「国民会議」を設ける方針を決めました。来月にも初会合を開き、まずは「給付付き税額控除」について議論を始める予定です。税金を下げる話と、現金を給付する話を一体で考えることが、今回の出発点になります。
最近、「国民負担率が高すぎる」「若者は稼いだお金の半分を取られている」といった声をよく目にします。数字だけを見ると、確かに不安になるのも無理はありません。ただ、その数字が何を意味しているのか、どこまで実感と一致しているのかは、意外と知られていません。国民負担率とは、税金と社会保険料を合わせた負担が、国全体の所得にどれくらい占めているかを示したものです。国の財政や制度を大きな視点で見るための指標であり、個人が実際にどれだけ引かれているかを、そのまま表しているわけではありません。
たとえば若い単身の働き手の場合、給料から引かれている税金と社会保険料を合計すると、収入の半分に達するケースは多くありません。それでも負担が重く感じられるのは、「払っているわりに、戻ってきている実感がない」と感じる人が増えているからだと考えられます。今回議論される給付付き税額控除は、そうした不満を和らげることを狙った制度です。収入が少ない人ほど税金を軽くし、税金を引ききれない場合には現金を給付する仕組みです。働いても損をしにくく、生活を下支えする効果があるとされています。
一方で、この制度は簡単ではありません。制度の作り方次第では分かりにくくなり、事務も複雑になります。また、そのためのお金をどこから持ってくるのかという問題も避けられません。だからこそ、政府だけで決めるのではなく、与野党が参加する国民会議で議論する意味があります。社会保障の話は、「負担を減らすべきか」「給付を削るしかないのか」という極端な議論になりがちです。しかし、負担を下げれば、その分、医療や介護、子育ての費用が自分持ちになる可能性もあります。それが本当に安心につながるのかは、慎重に考える必要があります。企業にとっても、この議論は他人事ではありません。税や社会保険の仕組みは、手取り賃金や人件費に直結します。賃上げや人材確保を考える上でも、制度の方向性を見誤ることはできません。
今回の国民会議は、「負担が重いか軽いか」を競う場ではありません。払っているお金が、どのように使われ、どんな形で生活を支えているのか。その関係を、分かりやすく、納得できるものにできるかどうかが問われています。給付付き税額控除の議論をきっかけに、社会保障の負担と給付をどう組み立て直すのか。数字だけに振り回されず、暮らしの実感に近い制度へと近づけることができるのか。国民会議の役割は、そこにあると言えるでしょう。
社会保険労務士法人ブレインズ



