
「経営を支援する側」が経営でつまずく理由
経営コンサル会社の倒産が、過去最多ペースで推移しているというニュースが報じられている。この話題を見て、あるプロ野球の名コーチが語った言葉を思い出しました。
「理論を知っているコーチと、試合を知っているコーチは違う」
野球の世界ではよく知られた話だ。バッティング理論やフォーム解析を完璧に説明できても、実際に満塁の場面で打席に立った経験がなければ、選手が感じる重圧や判断の難しさは分かりません。優れたコーチほど、自分が試合で失敗した経験、追い込まれた経験を語ります。そこに説得力が生まれるように感じます。この構図は、経営支援の世界でもまったく同じ。経営を語れる人は多い。理論、成功事例、フレームワークを並べることはできる。しかし、それはベンチから試合を眺めている立場の話です。実際の経営は、グラウンドの真ん中で、失敗すればその責任をすべて背負う立場で行うものです。売上が立たなければ試合は終わります。資金繰りが詰まれば次の回は回ってきません。人が辞めれば守備位置は一気に崩れます。理論通りに采配を振るえない場面が、むしろ日常だ。野球のコーチが「理論上はこの配球が正しい」と言うのは簡単です。しかし、実戦を知るコーチは必ずこう付け加える。「ただし、この場面では選手がどう感じるかを見なければいけない」と。
経営支援がうまくいかなくなる原因も、ここにあるように感じます。経営をしたことがない人ほど、正解を断定的に語る。理論上の最適解を示し、それで終わってしまう。一方で、経営を経験した人は、選択肢とその代償を並べます。なぜなら、どの選択にも必ず痛みが伴うことを知っているからでしょう。経営者が本当に求めているのは、模範解答ではありません。打席に立つ選手が欲しいのは、「このフォームが正しい」という説明ではなく、「この場面でどう腹をくくるか」という助言だと思います。経営も同じで、最終的に決断するのは経営者本人であり、その覚悟を現実の重さで共有できるかどうかが、支援の質を決めると考えます。
倒産に至る経営コンサル会社を見ていると、ある意味で分かりやすい。自分自身は試合に出ていないのに、采配だけを語ろうとしている。自社の売上づくりや組織づくりではリスクを取らず、他人の経営には戦術論を語る。この矛盾は時間の問題で露呈するように感じています。優れた野球コーチは、自分の現役時代の失敗談を隠さない。それが選手の信頼につながる。経営支援も同様で、本当に信頼されるのは、自分の経営で失敗し、立て直してきた経験を持つ人間だ。経営コンサル会社の倒産が過去最多ペースで推移している理由は、景気や流行だけでは説明できません。経営をしたことがない人が、経営を分かったつもりになった。この一点に尽きると思います。
経営を語るなら、まず自分で経営をやれ。
試合を知らないコーチの言葉が響かないように、経営を知らない支援は、現場には届かない。
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