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2025年、介護事業者倒産が過去最多

「介護事業者」の倒産が過去最多 – Yahoo!ニュース

社労士の視点で見る「訪問介護」が立ち行かなくなった理由

2025年、介護事業者の倒産件数は過去最多水準に達しました。特に訪問介護事業所の減少は顕著で、現場に関わってきた立場から見ると、これは経営者の努力不足ではなく、介護保険制度そのものが現場実態に耐えられなくなっている結果と受け止めるべき状況です。ここ数年の倒産増加は「たまたま厳しかった年」ではなく、制度疲労が臨界点を超えたサインと言えます。

訪問介護が特に倒れやすい制度構造

訪問介護は、公定価格で運営される介護保険サービスの中でも、構造的に最も利益が出にくい業態です。サービス内容ごとに報酬単価が細かく定められており、物価高騰や最低賃金の上昇があっても、利用者に価格転嫁することはできません。一方で、訪問介護は移動を前提とするため、ガソリン代、車両維持費、通信費、待機時間といったコストが必ず発生します。しかも、1人の職員が1日に対応できる件数には限界があり、「稼働率を上げれば解決する」という単純な話ではありません。近年の介護報酬マイナス改定は、この脆弱な収益構造に直接ダメージを与えました。売上はほぼ固定されているのに、支出だけが確実に増えるような状態では、利益を削り続ける以外に耐え方がありません。処遇改善加算についても、社労士として実務を見ていると限界が明確です。制度自体は重要ですが、要件は複雑で事務負担が重く、「現場と管理を分業できる規模の事業所」ほど有利になります。管理者が現場に出続けなければ回らない小規模訪問介護では、制度があっても十分に使えないケースが少なくありません。さらに、処遇改善は既存の報酬枠内で行う前提のため、賃上げをすればするほど経営体力が削られるという矛盾を抱えています。

人手不足と「善意依存」で成り立つ現場の限界

訪問介護は、人がいなければ売上が立たない業態です。人手不足により受け入れ件数を抑える → 利用率が下がる → 売上が減る → 賃上げできない → 人が定着しない、という負の循環に、多くの事業所が陥っています。それでも現場の職員が辞めずに残っているのは、訪問介護という仕事に誇りと使命感を持っているからです。しかし、その善意に依存した運営は、制度としては明らかに持続可能ではありません。若年層が定着せず、職員の高齢化が進み、「次の担い手がいない」ことが経営リスクとして顕在化しています。訪問介護は、地域包括ケアの根幹を支える不可欠なサービスです。にもかかわらず、最も続けにくい業態になっている現状は、報酬水準の問題だけでなく、制度設計の前提そのものが現場に合っていないことを示しています。一時的な報酬引き上げや補助金ではなく、移動・待機時間の評価、小規模事業所を前提とした制度設計、人材定着を軸にした報酬体系への見直しが不可欠です。倒産件数の増加は、事業者の失敗ではありません。制度の枠内で真面目に運営してきた事業所ほど、先に限界を迎えているという現実を直視しなければ、訪問介護というサービス自体が地域から静かに消えていくことになるのではないかと危惧しています。

仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ

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