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飲食店・学習塾の倒産過去最多が示すもの【社労士視点での構造分析と現実的対策】

飲食店の倒産件数過去最多に 3年連続で増加…業態別最多は「酒場・ビヤホール」 学習塾の倒産も過去最多(FNNプライムオンライン)|dメニューニュース(NTTドコモ)

2025年、飲食店の倒産件数が900件と過去最多を更新し、3年連続で増加しました。業態別では「酒場・ビヤホール」が最多となり、ラーメン店、焼肉店といった定番業態でも倒産が相次いでいます。また、学習塾についても倒産件数は46件と過去最多に達しました。調査を行った帝国データバンクは、団体客の減少、節約志向の高まり、原材料費・人件費の高騰といった複合要因を指摘しています。これらの数字は単なる「景気の悪化」では説明しきれません。社会保険労務士の立場から見ると、人件費構造と労務管理の歪みが、外部環境の変化に耐えられない事業体質を露呈させた結果と捉える必要があります。

なぜ「酒場・ビヤホール」と「学習塾」が直撃を受けたのか

酒場・ビヤホールは、団体需要と長時間滞在を前提にしたビジネスモデルに依存してきました。しかし、コロナ禍以降に定着した少人数利用・短時間利用の流れは完全には戻っていません。その一方で、深夜帯・週末を中心に人手を確保する必要があり、最低賃金の上昇や割増賃金の負担増が直撃しています。結果として、売上が戻り切らない中で固定的人件費だけが積み上がり、資金繰りを圧迫する構造が生まれています。学習塾についても事情は似ています。少子化により市場全体は縮小傾向にある一方、講師の確保や質の維持のために人件費は下げにくい。さらに、保護者の節約志向から月謝の値上げが困難で、「値上げできないがコストは上がる」典型的な板挟み状態に陥っています。ここに、講師を個人事業主扱いにしてきた旧来型の運営が見直され、労務リスクが顕在化しているケースも少なくありません。

社労士として考える現実的な対策

今回の倒産増加局面で重要なのは、「もっと頑張る」「節約する」といった精神論ではなく、労務と人件費の設計そのものを見直すことです。具体的には、実態に合わないシフトや契約形態を放置したままでは、賃上げ局面に耐えることはできません。営業時間・稼働時間に即した雇用区分の再設計、固定人件費と変動人件費の切り分け、業務量に見合った役割分担の明確化が不可欠です。また、小規模事業者ほど見落とされがちですが、助成金や制度活用は「最後の延命策」ではなく、体質改善のための時間を買う手段として位置付けるべきです。その間に、労務管理を整理し、無理のある働かせ方や属人的運営から脱却できるかどうかが、その後の生死を分けます。飲食店も学習塾も、「需要が消えた」業種ではありません。しかし、従来の前提で人を使い続ける限り、外部環境の変化はすべて致命傷になります。倒産件数過去最多という数字は、経営者に対し「今の労務設計は本当に現実に合っているのか」という問いを突き付けているのです。

社労士としては、倒産後の整理ではなく、倒産統計に表れる前段階での労務・人件費設計の見直しこそが最大の支援領域であると、改めて強調したいところです。

仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ

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