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厚労相「国保逃れ」対策を検討へ

厚労相、国保逃れ対策の必要性検討(共同通信) – Yahoo!ニュース

厚生労働省の上野賢一郎厚生労働相は、一般社団法人の理事就任などを通じて国民健康保険料の納付を避ける、いわゆる「国保逃れ」について、対策が必要かどうか検討する考えを示しました。会見では「大事なのは、社会保険料納付に対する納得感が損なわれないよう制度を適切に運用していくことだ」と述べています。今回の発言は、単なる抜け道つぶしではなく、制度そのものの信頼を守るという意味合いが強いと受け止めるべきでしょう。国保の保険料負担が重いと感じる人が増える一方で、「年収を変えずに社会保険料が50%前後削減できる」「月4万円台で健康保険と厚生年金に入れる」「扶養家族の保険料が無料になる」といった広告が目立つようになりました。こうした魅力的なうたい文句が広がるほど、正面から国保を負担している人の側には「真面目に払うのが損なのでは」という不公平感が生まれやすくなります。厚労相が触れた「納得感」とは、まさにこの点だと思います。


国保逃れの本質は「払う人が損をする」構図が生む不信

国民健康保険は、会社員が入る健康保険と仕組みが異なり、家族構成や所得によって負担感が強く出やすい制度です。とくに世帯所得が一定以上の人や扶養家族がいる人ほど、保険料の負担が重く感じられる局面が出てきます。その結果、「制度がきついから何とかしたい」という心理が生まれるのは自然です。ただ、問題はそこで「制度の趣旨とは違う形で負担を回避する動き」が広がったときです。一部の人だけが形式を整えて負担を回避し、他の人は正面から負担している。こうした構図が可視化されると、制度への信頼は急速に損なわれます。国保逃れが社会問題化しやすいのは、脱法かどうか以前に、制度運営の前提である公平感が壊れるからです。


「社会保険が半額」は魅力的だが

ここで整理しておきたいのは、社会保険が「安く入れる商品」ではないという点です。健康保険と厚生年金は、病気やケガ、老後といったリスクを社会全体で支える共助の仕組みとして成り立っています。
つまり大切なのは、「加入できるか」ではなく、「負担と給付のバランスに納得感があるか」という視点です。ところが近年、「年収を変えずに保険料が半額になる」「家族分の負担がゼロになる」といった節約を前面に出したサービスが目立つようになりました。もちろん、制度を正しく活用して負担が軽くなること自体は否定されるものではありません。しかし、保険料の負担を極端に軽くすることだけが目的化して広がってしまうと、真面目に保険料を負担している人の側に「なぜ自分たちだけ高いのか」という不公平感が生まれます。社会保険は、誰かが得をすれば終わりの制度ではありません。納得感が損なわれれば、制度への信頼が崩れ、結果として共助そのものが機能しなくなります。厚労相が「社会保険料納付に対する納得感が損なわれないよう適切に運用することが大事だ」と述べたのは、まさにこの公平性の問題を意識しているといえます。


一般社団法人を介した加入スキームが国保逃れと見られる境界線

ニュースで触れられている「一般社団法人の理事就任などで国保を避ける」という文脈は、まさに境界線の話です。一般社団法人に所属し、理事や従業員としての体裁を整えることで社会保険に入るという設計自体が直ちに違法と断定されるわけではありません。ただし、そこで問われるのは「社会保険の適用に耐える実態があるか」です。実際に業務の提供があるのか。指揮命令関係があるのか。報酬や給与が実態に基づいているのか。役員就任が名目にすぎないのではないか。こうしたポイントが弱いと、保険料を避けるための形だけの仕組みと疑われる余地が出てきます。今回、厚労相が「対策が必要か検討する」と述べたことは、この境界線を国として整理し直す可能性を示唆しています。


まとめ

国保の負担が重いという悩みは、個人事業主やフリーランスにとって紛れもない現実問題です。だからこそ「半額になる」「家族が無料になる」といった表現は強く刺さるのだと思います。支払いの苦しさを知っている人ほど、「もう限界だ」「何とかしないと生活が成り立たない」と感じ、最短距離の答えに飛びつきたくなるのも無理はないかもしれません。ここまで国保の負担感が強くなった背景には、制度設計や政策の積み重ねがあるのではないかと感じます。

今回のニュースは、国が「国保逃れ」という現象をこのまま放置しない可能性が高まったというシグナルにも見えます。ただ、そのとき政府に求められるのは、抜け道を塞ぐことだけではないはずです。社会保険制度は共助で成り立っており、多くの人が「高い」「重い」「苦しい」と思いながらも、誠実に負担して支えている現実があります。その納得感が損なわれてしまえば、制度は信頼の面から揺らいでしまうのではないでしょうか。だからこそ、国保逃れ対策を検討するのであれば、単に取り締まりや規制の強化に終始するのではなく、「なぜここまで負担が重くなったのか」「なぜ人々が逃げ道を探さざるを得ない状況になっているのか」という根本原因にも目を向ける必要があるのではないかと考えます。制度を守るというのであれば、共助が機能するための納得感を回復させることこそ必要ではないかと思っています。

仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ

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