
福島県では、物価高騰や最低賃金の引上げに対応する中小企業の負担軽減を目的として、「中小企業賃上げ緊急一時支援事業助成金」を実施しています。本制度は国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を財源としており、賃上げを実施した企業に対して対象従業員1人あたり3万円を支給する仕組みとなっています。雇用維持と地域経済の安定を目的とした制度であり、最低賃金付近の労働者を多く抱える事業所ほど活用メリットが大きい点が特徴です。助成対象となるのは、福島県内に本社または主たる事業所、もしくは支店や営業所を有する中小企業および個人事業主です。県内事業所で雇用保険被保険者を1名以上雇用していることに加え、県税の未納がないこと、不正受給歴がないこと、反社会的勢力との関係がないことなど、一般的な公的助成制度と同様の適格性要件が求められます。なお、いわゆるみなし大企業など一部事業者は対象外となるため、募集要項の確認が不可欠です。
助成額は定額で、賃上げを実施した対象従業員1人につき3万円が支給されます。ただし、助成対象人数には32,000人という全体上限が設定されており、申請期間内であっても上限到達により受付が終了する可能性があります。制度の性質上、申請準備の遅れがそのまま受給機会の喪失につながるため、早期の対応が重要になります。賃上げ要件としては、令和7年9月5日から令和8年1月1日までの間に賃金引上げを実施していることが必要です。対象となるのは県内事業所で勤務する雇用保険被保険者であり、時給1,018円以下の従業員を1,033円以上へ引き上げていることが求められます。さらに、引上げ後の賃金が最低1か月以上支給されていること、申請時点においても当該水準を維持していることが必要となります。加えて、申請後1年以上の雇用継続見込みがあることも要件とされており、有期雇用者についても同様の継続見込みが求められます。
申請は電子申請のみで実施され、事業者登録と助成金申請の二段階手続きが必要となります。事業者登録は令和8年2月26日から5月24日まで、助成金申請は令和8年2月26日から5月31日まで受付されます。登録が完了していなければ本申請ができないため、まずはアカウント作成と登録手続きを早期に行うことが実務上のポイントとなります。提出書類としては、対象従業員一覧、賃金改定月の労働条件通知書または雇用契約書、賃金改定前後の賃金台帳、振込口座確認書類、法人の場合は履歴事項全部証明書、個人事業主の場合は開業届や確定申告書などが求められます。特に賃金改定の事実と継続性を証明する資料の整合性は審査上重要であり、労働条件通知書の未整備や賃金台帳との不一致は不備指摘の原因となりやすいため注意が必要です。社労士の視点としては、最低賃金算入範囲の整理が最初の実務ポイントになります。基本給のみで時給判断を行うのではなく、最低賃金算入対象外となる手当の取扱いを踏まえた正確な時間給換算が必要です。また、引上げ後賃金の継続支給要件があるため、一時的な賃上げではなく制度を見据えた賃金設計が求められます。さらに、他県の賃上げ支援制度や業務改善助成金との併用可能性を検討することで、人件費上昇の実質的な負担を抑制できるケースも少なくありません。
福島県の本助成金は、申請手続き自体は比較的シンプルである一方、人数上限による早期終了リスクがある点が最大の特徴です。対象となる可能性がある事業所では、賃上げ実施の確認と証拠書類の整理を早期に進め、迅速に申請できる体制を整えておくことが受給の鍵となります。
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