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中国での入院一時金請求急増

中国で「入院」し日本の保険会社に一時金請求 胃腸炎大半 2年で20倍急増(テレビ朝日系(ANN)) – Yahoo!ニュース

中国で入院し、日本の民間医療保険の入院一時金を請求するケースが急増していると報じられました。報道では、ある大手生命保険会社で中国の病院への入院を理由とする一時金請求が、2022年度の約650件から2024年度には約1万3000件へと約20倍に増えたとされています。金融担当相も、契約者間の公平性の確保が重要だと述べています。今回の件は、一部の請求のあり方だけを問題にする話ではありません。むしろ、「入院したらまとまったお金が出る」という医療保険の設計自体が、本当に必要なのかを考えさせる出来事です。

医療保険の問題は商品設計

今回のニュースで注目すべきなのは、国籍の問題ではなく、入院一時金型の医療保険がもともと濫用に弱い構造を持っていることです。生命保険文化センターでも、医療保険には入院1日ごとの日額型だけでなく、入院日数にかかわらず一時金を受け取れるものや、短期入院でも給付対象になるものがあると案内されています。つまり、実際にどれだけ医療費がかかったかよりも、「入院した」という事実そのものにお金を払う商品が広く存在しているわけです。こうした商品は、本来の高額な損失への備えというより、「条件を満たせば受け取れる給付」に近くなりやすく、今回のような歪みを生みやすいといえます。保険は本来、めったに起きない大きな損失に備える仕組みです。ところが、軽症でも入院という形式さえ整えば定額給付が発生し得る商品が多いのであれば、保険というより“給付金付きの金融商品”のようになってしまいます。今回の件は、一部の契約者のモラルの問題というより、そもそもそのような商品設計を広く売ってきたこと自体に無理があったのではないか、という視点で見るべきでしょう。

日本では公的医療保険が手厚い

そもそも、日本では公的医療保険がかなり手厚く整っています。協会けんぽでも、高額療養費制度により、入院などで医療費が高額になっても、1カ月ごとの自己負担は一定額までに抑えられると案内されています。しかも、差額ベッド代や食事代などの保険外負担は対象外と明記されており、逆に言えば、通常の保険診療部分については自己負担の上限管理がされているということです。医療費そのものが青天井で家計を壊すような場面は、一般に想像されているよりずっと限定的です。さらに、会社員など健康保険の被保険者であれば、病気やけがで働けないときには傷病手当金があります。協会けんぽの案内でも、傷病手当金の1日あたり支給額は標準報酬月額を基にした額のおおむね3分の2とされており、医療費だけでなく休業中の収入減にも一定の備えがあります。つまり、多くの給与所得者にとって本当に重いリスクは、「入院したこと」そのものではなく、公的保障で埋まらない生活費の不足や、保険外負担のほうです。この前提を見れば、民間医療保険を何となく持ち続ける合理性はかなり弱くなります。

備えるべきなのは公的保険で埋まらない部分

厚生労働省の2023年病院報告では、一般病床の平均在院日数は15.7日でした。入院が長期化しやすかった時代とは違い、今は入院そのものが短期化しています。短い入院に対して、長年保険料を払い続けて定額給付を受ける仕組みが、本当に家計に見合うかは冷静に考える必要があります。平均的な会社員世帯であれば、まず考えるべきは医療保険に毎月保険料を払うことではなく、生活防衛資金を厚く持つことです。もちろん、民間医療保険がすべて不要とまでは言いません。差額ベッド代、先進医療の技術料、長期療養時の生活費不足など、公的保険で埋まらない部分に絞って備える考え方には意味があります。ただ、今回のニュースを見て言えるのは、「もっと医療保険が必要だ」ではありません。むしろ逆で、「入院したら一時金が出る」という古い発想の商品は、今の制度と医療実態に照らすと、ムダになりやすいということです。今回の問題は、保険金請求の公平性だけでなく、医療保険そのものを見直すきっかけとして捉えるべきではないでしょうか。

仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ

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