社員が異動を断った場合には解雇できるかという質問に対して、一概には答えられません。異動の命令が会社の権利濫用に当たらないかどうか、従業員が異動を拒否する正当な理由があるかどうかなど、ケースバイケースで判断されるからです。
会社は就業規則や雇用契約書などで人事異動を命じる権利(配転命令権)を持っているとされます。命令された場合、社員はこれに従う義務があり、原則として人事異動の命令を拒否することはできません。人事異動の拒否は、業務命令違反に当たり、懲戒処分や解雇の対象になる可能性があります。
とはいえ、会社の配転命令権にも一定の制限があるとされています。例えば、以下のような場合は、人事異動を拒否することが認められることがあります。
- 雇用契約で職種や勤務地が限定されている場合
- やむを得ない事情(自分や家族の病気や介護など)がある場合
- 異動に不当な目的や動機(嫌がらせやパワハラなど)がある場合
- 異動によって賃金が下がる場合
異動を断った場合には解雇できるかどうかは、会社と従業員の間の契約内容や状況などを客観的かつ合理的に判断しなければなりません。移動拒否による解雇を行う際は、不当解雇であるとして訴えられるリスクもありますので、会社は注意深く対応する必要があります。