
はじめに
2025年10月からの最低賃金引き上げを前に給与計算の見直しが必須となっています。最低賃金というと「時給労働者向け」と思われがちですが、月給制社員でも必ず確認が必要です。さらに実務上は、最低賃金のチェックに加えて、残業代計算の基準となる「割増賃金の基礎」との違いを理解しておく必要があります。同じ“1時間あたりの賃金”を算出する計算式でも、含める手当が異なるため、金額がズレることがあるからです。本記事では社労士が 最低賃金と割増賃金の違いを分かりやすく解説します。
最低賃金チェックの基本(月給者の場合)
月給制社員の場合も「1時間あたりの賃金」に換算し、地域別最低賃金と比較する必要があります。計算手順は以下のとおりです。
- 月給額から「最低賃金の対象外賃金」を差し引く
- 月平均所定労働時間を算出する
(=1日の所定労働時間×年間所定労働日数÷12か月) - (対象賃金 ÷ 月平均所定労働時間) を算出し、最低賃金以上か確認する
最低賃金の対象外となる賃金(7項目)
- 精皆勤手当
- 通勤手当
- 家族手当(扶養手当・子女教育手当等を含む)
- 所定時間外労働の割増賃金
- 所定労働日以外の労働に対する割増賃金
- 深夜労働の割増賃金(通常賃金を超える部分)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
住宅手当は最低賃金では原則“含める”側である点に注意が必要です。
割増賃金の基礎(残業代の計算根拠)
残業代・休日労働・深夜労働などの割増賃金を算出する際の「算定基礎賃金」からは、労基法施行規則第21条により、次の7項目のみが除外できます。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当(実費に応じたもの)
- 臨時に支払われた賃金(結婚祝金など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
精皆勤手当は必ず基礎に含める必要があります。
最低賃金と割増賃金 ― 手当の扱いの違い
| 手当区分 | 最低賃金 | 割増賃金 |
|---|---|---|
| 基本給・職務手当・役職手当等 | 含める | 含める |
| 精皆勤手当 | 除外できる | 含める |
| 通勤手当 | 除外 | 除外 |
| 家族手当 | 除外(子女教育を含む) | 除外(別項目で子女教育手当も列挙) |
| 子女教育手当 | 家族手当に含めて除外 | 独立項目として除外 |
| 別居手当 | (最低賃金では規定なし=含める) | 除外 |
| 住宅手当 | 含める | 除外(実費に応じたもののみ) |
| 臨時に支払う賃金 | 除外 | 除外 |
| 1か月超ごとの賃金(賞与等) | 除外 | 除外 |
| 時間外・休日・深夜の割増分 | 除外 | ―(そもそも算定対象外) |
実務上の注意点
- 最低賃金では住宅手当を含めるが、精皆勤は除外できる
- 割増賃金では住宅手当を除外できる(実費型のみ)、精皆勤は含める
- 「子女教育手当」は、最低賃金では家族手当に含め、割増賃金では独立項目として扱う
- 手当の名称ではなく「実質」で判断する(例:通勤手当が一律支給なら除外できない場合あり)
まとめ
最低賃金チェックと残業代計算では、同じ「1時間あたり賃金」を算出するにもかかわらず、対象となる手当が異なるため金額が一致しない場合があります。
- 毎年の最低賃金改定に対応するためのチェック
- 割増賃金の基礎を正しく押さえた残業代計算
- 給与規程や手当設計の見直し
上記が、労務コンプライアンスの大前提です。
社会保険労務士法人ブレインズ(仙台・東京虎ノ門)では、給与計算アウトソーシング・最低賃金チェック・割増賃金設計の見直しをご支援しています。「最低賃金を割っていないか?」といった疑問があればお気軽にご相談ください。



