
事業主・加入者のみなさまへ「令和6年度被扶養者資格再確認の実施方法等について」 | 広報・イベント | 全国健康保険協会
はじめに
11月は、年末調整や賞与計算の準備などで労務担当者が大忙しの時期です。その中で忘れがちなのが「被扶養者資格の再確認」です。この手続きは、健康保険に加入している従業員の家族(被扶養者)が、今も引き続き扶養の条件を満たしているかを確認するために、協会けんぽ(全国健康保険協会)が毎年実施しているものです。法律に基づいた正式な手続きであり、11月にかけて全国の事業所に「被扶養者状況リスト」が送られます。この確認を怠ると、扶養から外れるべき人がそのままになってしまい、後で保険給付の返還を求められることがあります。そのため、年末業務の一つとして必ず対応しておきたい大切な手続きです。
被扶養者資格の再確認とは?
健康保険の「被扶養者」とは、被保険者(従業員)に生活を支えられている家族のことです。
その家族が今も扶養の条件を満たしているかを毎年確認するのが「被扶養者資格の再確認」です。
例えば、次のようなケースでは扶養の要件を外れる可能性があります。
- 子どもが就職して自分で社会保険に加入した
- 配偶者がパート収入を増やして年収が130万円を超えた
- 親が年金を受け取り始めた
- 離婚などで生計が別になった
こうした変化があったにもかかわらず、会社や協会けんぽに報告しなければ、「本来は扶養ではない人」が扶養に残ってしまいます。その場合、後から医療費や給付金を返還しなければならなくなることもあります。したがって、この確認はトラブルを防ぐための重要なチェックです。
いつ、どんな書類が届くの?
協会けんぽからは、10月初旬から11月上旬にかけて順次、次の書類が送られます。
- 被扶養者状況リスト(2枚複写:1枚目が提出用、2枚目が控え)
- 記入方法などが書かれたリーフレット
- 被扶養者調書兼異動届(扶養解除がある場合に提出)
- 被扶養者現況申立書(別居や海外在住の家族がいる場合などに提出)
- 返信用封筒(協会けんぽ宛)
会社に届いたら、早めに担当者が内容を確認し、従業員へ案内を行いましょう。
年末調整と重なる時期なので、社内でスケジュールを立てておくことがポイントです。
どうやって確認するの?
手続きの流れは次の通りです。
- 会社(事業主)が、従業員に「家族の状況を確認してください」と依頼します。
- 従業員が家族の現状を確認し、扶養要件を満たしているかを自己申告します。
- 会社はその結果を「被扶養者状況リスト」に記入します。
確認は口頭でも構いませんが、将来の証拠を残すためには、協会けんぽが提供している「被扶養者資格再確認調査票」(Excel・PDF)を使って書面で行うのがおすすめです。もし要件を満たさない家族がいた場合は、「解除となる」欄にチェックを入れ、備考欄に理由(就職・収入増加・離婚など)を記入します。そのうえで「被扶養者調書兼異動届」を添付して提出します。
提出期限と注意点
提出期限は令和6年11月29日(金)です。期限を過ぎても必ず提出しなければなりません。変更がない場合には通知などは届きませんが、解除がある場合は必ず関連書類を添えて提出します。特に、収入の増加による扶養解除がもっとも多く、130万円の壁を意識した確認が必要です。
「年収130万円の壁」ってなに?
健康保険では、家族の年収が130万円を超えると原則として扶養の資格を失います。ただし、近年は人手不足の影響で、短期間だけ労働時間が増え、年収が一時的に130万円を超えるケースが増えています。このような場合、厚生労働省が示す「年収の壁・支援強化パッケージ」により、一時的な収入増加であれば扶養を継続できる特例があります。そのためには、被扶養者を雇っている事業主が「一時的な収入変動に係る証明書」を発行し、リストと一緒に提出する必要があります。証明書は協会けんぽのホームページからWordやPDF形式でダウンロードできます。この制度を上手に活用すれば、パート勤務の配偶者が急に扶養から外れるリスクを避けることができます。
別居や海外在住の家族がいる場合
被保険者と別居している家族や海外に住んでいる家族がいる場合は、「被扶養者現況申立書」を提出する必要があります。その際、仕送りの事実を確認できる通帳の写しや送金控え、住民票などを添付します。学生で仕送りを受けている場合は、通帳の写しを省略できることもあります。こうした書類は細かく感じられるかもしれませんが、「実際に扶養していること」を証明する大切な資料になります。別居の親を扶養している事例は多いため、忘れずに確認しましょう。
実務担当者が押さえておきたいポイント
11月は年末調整と社会保険の確認が重なるため、どの企業でも総務・経理担当者の負担が大きくなります。被扶養者リストの確認はつい後回しにされがちですが、提出期限を過ぎると協会けんぽから催促が届くこともあります。そのため、早めに社内でスケジュールを組み、従業員への周知・回収を進めましょう。また、「収入の見込みが微妙」「別居家族の扱いがわからない」など判断に迷うときは、社労士に相談すると安心です。正しい判断を早めに行うことで、無用な返還やトラブルを防ぐことができます。
まとめ|年に一度の「社会保険の棚卸し」
被扶養者資格の再確認は、単なる事務手続きではなく、会社の社会保険管理体制を整える絶好の機会です。従業員やその家族の安心を守り、保険料の適正化を進めるためにも、11月中に確実に対応しておきましょう。社会保険労務士法人ブレインズ(仙台・虎ノ門)では、宮城県内だけでなく全国の企業の被扶養者リスト確認、年末調整、社会保険手続きなど、労務の繁忙期をしっかり支援しています。「人手が足りず対応が遅れている」「年収130万円の壁で判断が難しい」などのご相談もお気軽にどうぞ。地域に根ざした社労士として、丁寧にサポートいたします。



