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【速報】通勤手当の非課税限度額引き上げ

車通勤手当の非課税額を引き上げ 11年ぶり、物価高を考慮 (共同通信) – Yahoo!ニュース

マイカー通勤者の通勤手当について、11年ぶりとなる非課税限度額の引き上げが発表されました。ガソリン価格の高止まりを踏まえた対応ですが、この変更が企業の給与計算と年末調整に与える影響は予想以上に大きく、今年の事務は例年とは比べ物になりません。最大の理由は、今回の改正が 2025年4月にさかのぼって適用される点です。つまり、すでに支払ってしまった4〜12月分の通勤手当を、新しい非課税限度額に照らして“再計算”し、その差額を年末調整に反映させる必要があります。

本記事では、社労士として給与計算を行う立場から、企業が実際に何をどう処理すべきか、具体的・詳細に解説します。


まず行うべきは「4〜12月の通勤手当を全員分、正確に洗い出すこと」

年末調整の最初の関門は、すでに支給した通勤手当の情報を従業員ごとに整理し直す作業です。ここでは、毎月の支給額と同じくらい重要なのが 片道距離の正確性です。片道距離は非課税限度額の根拠となるため、ここに誤りがあると、その後の全工程が崩れます。片道25〜35kmの従業員を例にすると、旧制度の非課税限度額は18,600円、新制度では19,700円です。この差額1,100円が、4月以降「本来非課税にできた金額」となります。


次に行うのは「本来非課税であるべき金額」を正確に算定する作業

ここからが、今年の年末調整が特別になる理由です。

支給済みの通勤手当のうち、旧制度では課税扱いだった部分を、新制度の非課税枠に合わせて再整理します。たとえば毎月2万円の通勤手当を支給していた従業員が、旧制度の非課税限度額が18,600円だった場合、差額の1,400円が課税されていました。しかし、新制度では非課税限度額が19,700円になれば、
課税対象は1,400円 から300円に減ることになります。この差額に対して所得税が本来より多く徴収されていたのです。つまり、企業はその差額を従業員に返す必要があります。


年末調整では「徴収しすぎた税金」を一人ひとり計算し直す

年末調整とは本来、1年間の給与と控除をまとめて精算する作業です。しかし今年に限っては、給与計算そのものを“過去分まで巻き戻して修正する”という工程が入ります。具体例で説明します。

仮に税率10%の従業員で、「本来非課税だった差額」が9,900円あった場合、その金額に対して約990円の所得税が徴収されていました。つまり、年末調整ではこの990円を従業員へ返金することになります。これを従業員全員分について行うことになるため、例年より作業は大幅に増えます。ここで初めて、次の工程「給与ソフトでの修正」へと進むことになります。


給与ソフトでは「課税・非課税の区分」を過去分まで修正する必要がある

多くの担当者が見落としがちなのがここです。通勤手当の課税・非課税の扱いは、給与ソフトの内部設定に強く依存します。freee、マネーフォワードなどのクラウド型でも、距離区分が正しく登録されていなければ自動再計算は正しく機能しません。弥生給与や給与奉行のような旧来型ソフトでは、月ごとの課税額を遡って修正しなければならない場合もあります。


従業員への説明も、今年は避けて通れない重要業務

税金が戻ること自体は従業員にとって歓迎すべきことですが、突然の還付には「なぜ返金されるのか」「給与計算に誤りがあったのではないか」といった疑問が必ず生じます。こうした混乱を防ぐためには、企業側が事前に説明文を配布し、今回の還付は給与計算ミスではなく制度改正によるものであることを明確に伝える必要があります。具体的には、通勤手当の非課税限度額が4月に遡って変更されたこと、還付はその制度変更に基づく正しい処理であること、そして来年以降は通常どおりの計算に戻ることの三点を簡潔に知らせておくことで、従業員の不安は大きく解消されます。


まとめ

今回の通勤手当の非課税限度額の引き上げは、従業員にとっては手取りが増える前向きな変更ですが、企業側の実務は例年以上に複雑になります。とくに今年の年末調整では、4月に遡って通勤手当の課税・非課税区分を見直し、徴収しすぎていた税金を一人ひとりに返金するという、通常とは異なる処理が求められます。給与計算の前提が途中で変わったことにより、支給済みの給与を改めて整理し直す必要が生じ、その作業は大きな負担となるでしょう。さらに、還付が生じる理由を従業員に丁寧に説明しなければ、不要な誤解や混乱を招く可能性もあります。制度自体は従業員の負担軽減につながるものですが、その裏で企業の現場が引き受ける作業量は少なくありません。今年の年末調整は「いつも通り」では済まず、通勤手当の再計算を軸とした特別対応になることを念頭に置き、早めに準備を進めることが不可欠です。

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