loader image

最新情報

パープル企業から脱却した先進企業に共通する条件

「パープル企業」から若者が去る理由とは? ブラックでもホワイトでもない企業はどう対応すべきか? #エキスパートトピ(横山信弘) – エキスパート – Yahoo!ニュース

「働きやすいのに、若手が辞めていく」。この現象は、単なる世代間ギャップや価値観の変化では説明できない。なぜなら、同じ時代環境の中でも、若手が強い熱量を保ち続ける企業が確かに存在しているからだ。違いを生んでいるのは福利厚生でも、研修制度でもない。人が仕事を通じて自分は何を分かるようになったのかを実感できる構造が残っているかどうかでしょう。

人が仕事に留まるか去るかを分けるのは「成長」ではなく「納得」である

人は本来、「成長したい」という抽象的欲求で働いてはいない。昨日よりも判断できることが増えたのか、失敗の理由を自分の言葉で説明できるようになったのか、次に同じ局面が来たときに何を見るべきかが分かってきたのか。そうした理解の更新があったとき、人は仕事に意味を見出すはずです。ところが多くの職場では、この理解の更新が置き去りにされている。評価制度やキャリア設計の言葉だけが先行し、経験そのものが薄められているように思います。結果として、従業員は「忙しいのに何も残らない」「評価はされているが、自分が変わった実感がない」という状態に陥ります。これがパープル企業の本質であり、若者が静かに離れていく理由のように感じています。

市場価値を語らない現場ほど結果的に市場で通用する理由

この点を最も端的に示しているのが トヨタ自動車 の現場である。ここでは若手に対して「市場価値を高めろ」「将来を見据えろ」といった言葉はほとんど使われない。代わりに繰り返されるのは、なぜその不具合が起きたのか、どの前提を見誤ったのか、次に同じ兆候が出たら何に注意すべきか、という極めて具体的で地味な問いです。この問いに正面から向き合い続けると、人は否応なく一次情報に近づきます。「現象を見て、仮説を立て、失敗を引き受け、その理由を自分の言葉で説明する」この積み重ねが判断力を鍛え、結果として外部環境が変わっても通用する人材を生みます。市場価値を意識しなかったからこそ市場で耐える力が残ったという逆説があるように感じます。

挑戦を制度化しなかった企業にだけ残った「衝動」

同様の構造は メルカリ にも見られる。この企業が特徴的なのは、「挑戦」を評価項目や制度に落とし込んでいない点です。若手が難易度の高い仕事に手を挙げる場面は多いが、それは成長計画に沿ったものではありません。事業が停滞する、誰かが腹を括らなければ前に進まない、という現実的な必然が人を動かしています。ここでは挑戦が「自己研鑽」ではなく「責任の引き受け」として発生しています。失敗も抽象化されず、「なぜその時そう判断したのか」という生々しい経験として共有されます。人はこのとき初めて、自分の未熟さと向き合い、同時に「それでもやれた」という手応えを得ると思います。

働きやすさを追求しながら経験密度を落とさなかった組織

サイボウズ は、しばしば「優しい会社」と評されています。しかし、この会社が本当に守っているのは優しさではなく、経験の回収可能性のように考えます。柔軟な働き方や多様な制度を認める一方で、仕事の判断や失敗を個人の内側に閉じ込めていません。プロジェクトが終わった後に問われるのは、「あなたはどれだけ成長したか」ではありません。「あなたは何を見て、何を見落とし、なぜそう考えたのか」です。この問いに答え続けることで、人は自分の経験を他者に説明できる形で整理し、納得として回収する。働きやすさと働きがいが両立している理由は、ここに尽きるように感じています。

社労士の視点で見るパープル企業化を防ぐための本質的介入

社会保険労務士法人ブレインズから見て最も重要なのは、「若手が辞める理由」を本人の意識や成長意欲の問題にすり替えないことです。実務上の本質は、制度が整っているかどうかではなく、その制度運用によって現場での判断経験が削られていないかにあります。評価制度が細かくなりすぎれば、従業員は自分で考えて決断するより、評価に安全な行動を選ぶようになります。面談や1on1が目的化すれば、仕事は「やること」より「説明すること」が中心になります。配置転換が短期間で繰り返されれば、自分の判断の結果を最後まで引き受ける機会が失われます。こうした状態では、仕事は回っていても、本人の中に「なぜそう判断したのか」「次はどう考えるのか」という思考が残りません。つまり、働いているのに経験が積み上がらない職場になります。問題視すべきなのは、この判断と責任の連続性が断ち切られている構造と考えます。そして社会保険労務士法人ブレインズが果たすべき役割は、成長支援策や新しい制度を提案することではありません。評価・面談・配置といった制度が、現場での判断機会を奪っていないか、失敗を引き受ける余地を残しているかを点検し、必要であればブレーキをかけることです。ここを見誤ると、働きやすいが中身のない、いわゆるパープル企業が完成します。

人は、忙しいから辞めるのではありません。厳しいからでもありません。仕事を通じて自分の中に何も残らなくなったときに静かに離れていくように感じています。

仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ

タイトルとURLをコピーしました