2026年2月3日、退職代行サービス「モームリ」を運営する会社の社長とその妻が、弁護士法違反の疑いで警視庁に逮捕されました。本人に代わって会社へ退職の意思を伝える「退職代行」は、ここ数年で急速に広がったサービスです。しかし今回の事件によって、そのビジネスのやり方に大きな法的問題があったことが明らかになりました。
今回の逮捕はどんな内容なのか
警視庁の発表では、逮捕された2人は弁護士資格を持っていないにもかかわらず、退職代行の利用者を提携している弁護士に紹介し、その見返りとしてお金を受け取っていた疑いが持たれています。期間は2024年7月から10月までで、6人の利用者を弁護士に紹介し、1人あたり1万6500円の報酬を得ていたとされています。ここでポイントになるのが「弁護士法」です。この法律では、弁護士資格のない人が報酬目的で法律に関わる仕事をあっせんすることを禁止しています。また、弁護士が無資格の事業者からお金を払って顧客を紹介してもらうことも認められていません。今回のケースでは、「モームリ」では対応できない利用者、たとえば公務員のように特別な法律手続きが必要な人や、会社とトラブルになりそうな人を弁護士に回し、そのたびにお金を受け取っていた点が問題とされています。報道では、元従業員の証言として、社内では弁護士に利用者を紹介するとキックバックが入る仕組みができあがっており、「これは違法だから外では話すな」と口止めされていたという話も伝えられています。さらに、そのお金の受け取り方についても、実態のない団体への賛助金や広告費といった名目にしていた疑いがあるとされています。今回の捜査では、紹介を受けていた弁護士側についても事情聴取が行われており、場合によっては弁護士側にも責任が及ぶ可能性があります。
退職代行サービスはどこまでが合法なのか
重要なのは、「退職代行サービスそのもの」が違法になったわけではないという点です。本人の代わりに会社へ退職の意思を伝えるだけであれば、基本的には法律上の問題はありません。これはあくまで伝言役としての仕事だからです。しかし、会社との交渉を行ったり、未払い賃金を請求したり、退職条件についてやり取りをする行為は、法律上は弁護士にしかできない仕事になります。退職代行会社がこの領域に踏み込んでしまうと、弁護士法違反になる可能性が非常に高くなります。今回の事件の核心は、単に「利用者を弁護士に紹介した」ことではなく、その紹介に金銭が発生するビジネスモデルになっていた点です。法律では、弁護士と顧客をつなぐこと自体は問題ありませんが、その見返りにお金を受け取る形にすると違法になる、という非常に厳しいルールがあります。「モームリ」は短期間で急成長し、多くの利用者を集めてきましたが、その拡大の裏で、法的にきわどい仕組みが常態化していた可能性が今回の逮捕で浮かび上がりました。この事件を受けて、今後は退職代行業界全体で、弁護士との関わり方やサービスの提供方法を見直す動きが強まると考えられます。また企業側としても、退職代行から連絡が来た場合に、それが単なる意思伝達なのか、それとも交渉行為にあたるのかを慎重に判断する必要がこれまで以上に高まります。
※本記事は報道されている内容をもとに整理したものであり、容疑の成否を確定するものではありません。



