
若い女性の地方流出が続いている。総務省の人口移動報告によれば、2025年の東京都への転入超過は女性が約3万8千人と、男性を大きく上回った。地方から都市部へ移動する女性が増えれば、地域の人口構造や少子化にも大きな影響を与える。そのため各自治体は危機感を強め、女性にとって魅力ある地域づくりを掲げた政策を打ち出している。新潟県では女性活躍企業の認証制度を創設し、女性用設備の整備や職場環境改善への補助制度を設けた。岡山県では女性のデジタル人材育成事業を進め、地方に住みながら都市部の仕事を受注できる仕組みづくりを目指している。こうした取り組みは、女性が働きやすい地域をつくるという点では一定の意味を持つ。しかし、これらの施策を見ていると一つの疑問が浮かぶ。本当に若い女性は「女性活躍制度」が不足しているから地方を離れているのだろうか。
若い女性が重視している仕事の条件
近年の就業意識を見ると、若い女性が職場選びで重視しているポイントはかなり明確になっている。仕事だけに生活を合わせるのではなく、私生活とのバランスを前提に働けること。安心して働ける人間関係や職場の雰囲気。時間や場所に縛られすぎない柔軟な働き方。そして、自分の市場価値を高められるスキルや経験を得られるかどうかである。結婚や出産といったライフイベントを経験しながら働き続けている先輩がいるかどうかも、企業選びの重要な判断材料になる。つまり、制度の有無よりも「その会社でどのように働き続けられるのか」という実態を見ているのである。こうした就業意識を踏まえると、女性活躍の認証制度や設備整備補助だけで流出を止められるとは考えにくい。女性用トイレや更衣室の整備、育児支援制度の導入などは当然必要な職場環境だが、それ自体が地方で働く決め手になるわけではない。若い世代は働き方の実態やキャリアの可能性を総合的に見て職場を選んでいる。
社労士視点で見る政策のズレ
社労士として企業の労務管理を見ていると、地方企業が特別に女性に厳しいというわけではない。育児休業制度や短時間勤務制度などは法律に基づき整備されており、多くの企業が一定の対応を進めている。問題は制度の有無というより、地方で働くこと自体の魅力が相対的に弱くなっている点にある。給与水準やキャリアの選択肢、スキルを磨ける機会などを総合的に比較したとき、都市部の企業のほうが魅力的に見える場面は少なくない。若い世代はそうした条件を冷静に比較し、自分の将来にとって合理的な選択をしているとも言える。地方流出の原因を「女性活躍の不足」とだけ捉え、認証制度や補助金を増やすことで解決しようとする政策は、問題の本質と少しずれている可能性がある。若い女性が求めているのは制度の数ではなく、安心して働き続けられる働き方や将来のキャリアの見通しだからである。地方の人口問題を本気で解決するのであれば、「女性活躍」という言葉だけを掲げるのでは足りない。若い世代が地方で働くことに魅力を感じられる仕事やキャリア環境をどう作るのか。その議論こそが、今本当に求められているのではないだろうか。



