
4月13日の報道では、自民党と日本維新の会が、配偶者の年金に関わる「第3号被保険者制度」について、対象を狭めていく方向で一致したとされています。報道では、2026年度中に具体的な制度設計を行う方向が示される一方、将来の給付権に関わるため慎重な議論が必要だとされており、別報道では5月中に骨子をまとめる方向とも伝えられています。社労士の立場から見ると、このニュースは単なる「3号を減らす」の話ではないように考えます。むしろ問われているのは、すでに進んでいる社会保険の適用拡大とどう接続させるのか、手取り減や扶養外れの不安にどう向き合うのか、そして企業実務に無理のない移行設計をどう作るのかという点ではないでしょうか。
第3号被保険者の縮小議論
第3号被保険者とは、厚生年金などに加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者で、原則として年収130万円未満の20歳以上60歳未満の人をいいます。もっとも、年収130万円未満でも、厚生年金保険の加入要件に当てはまる場合は第3号ではなく、自身が厚生年金・健康保険に加入することになります。厚生労働省の概況では、国民年金の第3号被保険者数は令和6年度末で641万人となり、前年度末より45万人減少しています。つまり、第3号は社会の働き方の変化と制度改正の中で、すでに縮小が進んでいる制度だというのが実態です。その中核にあるのが、被用者保険の適用拡大です。厚生労働省は、短時間労働者について、2026年10月に賃金要件、いわゆる「106万円の壁」を撤廃予定としており、企業規模要件も51人以上から36人以上、21人以上、11人以上へと段階的に縮小していく方針を示しています。さらに厚労省の整理でも、「まずは被用者保険の適用拡大を進め、そのうえで第3号被保険者制度の縮小・見直しに向けたステップを踏む」という方向性が示されています。
「公平性」より「手取り減」
厚生労働省の年金部会資料では、現場では税の壁と社会保険の壁が混同されていることがあり、労使双方の制度理解を強化すべきだと明記されています。これは社労士実務の感覚とも一致します。実際、企業でも社員でも、「103万円」「106万円」「130万円」が一緒くたに語られ、何を超えると何が変わるのかが整理されていないケースは珍しくありません。さらに、厚労省の事業主向けガイドでも、社会保険加入によって手取り額が変化すること、現在扶養に入っている人は新たに保険料が発生すること、そして配偶者の会社で支給されている家族手当・配偶者手当の対象外になる可能性があることに留意が必要だと案内されています。他方で、加入によって将来受け取れる年金が増え、傷病手当金や出産手当金といった保障も得られるため、単純な「損か得か」で処理できる話ではないように思います。第3号の見直しを「公平性のため」とだけ語るのは簡単ですが、家計にとっての影響はもっと具体的です。手取りはいくら減るのか、配偶者手当はどうなるのか、その代わりに何の保障が増えるのかを示さずに、「時代に合わないから見直すべきだ」と言っても、国民的理解は進まないでしょう。実際、直近の報道でも、具体策は国民的な理解がなければ進められないという慎重姿勢が示されています。
法改正待ちではなく「扶養・時間・手当」の棚卸しです
企業実務で先に着手すべきなのは、法改正の結論待ちではありません。週20時間以上働く短時間労働者がどれくらいいるのか、賃金要件の撤廃後に誰が加入対象になり得るのか、配偶者手当や家族手当の支給基準がどうなっているのか、そして本人が扶養内就労を希望している理由が税なのか社会保険なのかを、先に棚卸ししておくべきです。厚労省も、社会保険加入後の手取り変化を試算し、従業員説明に活用するよう案内しています。また、制度の最終形はまだ決まっていません。厚生労働省の年金部会議事録でも、適用拡大を進めて制度の縮小を進めるという大きな方向性は共有されている一方、その先に残る第3号被保険者については多様な事情があり、次期改正における制度の在り方の見直しについては意見がまとまらなかったとされています。あわせて、国民的な議論の場が必要であり、実態を精緻に分析しながら検討を続けるべきだとも整理されています。
仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ



