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雇用保険料、2年連続引き下げへ

雇用保険料、2年連続引き下げへ 1.35%で調整、厚労省(共同通信) – Yahoo!ニュース

厚生労働省は2025年12月、2026年度の雇用保険料率を2年連続で引き下げる方針を示しました。現在の1.45%から、1.35%程度への引き下げが検討されています。このニュースは「雇用情勢が改善したから保険料が下がる」と簡単に説明されがちですが、実際にはそう単純ではありません。今回の引き下げは、コロナ禍で大きく歪んだ雇用保険制度を、ようやく平時の姿に戻そうとする調整の一環と見るべきものです。


コロナ前の雇用保険は「安定した保険制度」だった

新型コロナウイルス感染症が拡大する以前、雇用保険制度は比較的安定して運営されていました。失業率は低水準で推移し、失業等給付の支出も大きな変動はなく、積立金には一定の余裕がありました。そのため、雇用保険料率も低位で推移し、企業・労働者双方にとって予測しやすい制度だったと言えます。


コロナ禍で雇用保険は「非常用財源」として使われた

状況が一変したのが2020年度以降のコロナ禍です。感染拡大による経済活動の停滞を受け、雇用を守るために雇用調整助成金が大規模に拡充されました。本来は景気後退局面で一時的に活用される制度ですが、この期間は前例のない規模と期間で支給が続きました。その結果、雇用保険財政からの支出は急増し、積立金は急速に減少しました。雇用保険は、失業に備える保険という本来の役割を超え、「雇用を維持するための緊急財源」として機能することになったのです。


それでも保険料をすぐに上げられなかった理由

財政が悪化すれば保険料を引き上げるのが通常ですが、コロナ禍の最中にそれを行うことは現実的ではありませんでした。企業は経営の継続自体が危ぶまれる状況にあり、人件費負担の増加は倒産や雇用喪失を加速させかねなかったためです。このため、国は国庫負担を拡大し、税金で雇用保険財政を支えるという異例の対応を取りました。保険料を据え置いたまま制度を維持したのは、雇用を最優先する政策判断の結果でした。


コロナ収束後に起きた「急激な保険料引き上げ」

感染状況が落ち着き、経済活動が回復に向かうと、次に課題となったのが雇用保険財政の立て直しです。コロナ禍で膨らんだ支出を放置するわけにはいかず、2022年度以降、雇用保険料率は短期間で引き上げられました。2023年度から2024年度にかけての高い料率水準は、景気が過熱したからではありません。コロナ特例によって生じた財政の歪みを、保険料で回収していく「後処理」の意味合いが強いものでした。


2025・2026年度の引き下げは「回復」ではなく「正常化」

2025年度に料率が引き下げられ、2026年度も引き下げが検討されている背景には、雇用調整助成金の支出が平常水準に戻り、雇用保険財政が一定程度安定してきたことがあります。重要なのは、これを「景気が良いから保険料が下がった」と理解しないことです。実態としては、コロナ対応で一時的に引き上げられた料率を、段階的に元の水準へ戻している途中段階にすぎません。今回の引き下げは、雇用保険制度がようやく平時の運用に戻り始めたことを示すものと言えるでしょう。


企業実務において注意すべき点

今回の引き下げにより、企業の人件費負担や労働者の保険料負担はわずかに軽減されます。しかし、コロナ前の水準に完全に戻ったわけではなく、今後の景気動向次第では再び引き上げが行われる可能性も十分にあります。雇用保険料は、景気変動に応じて調整される制度です。今回の引き下げを前提に、固定的な人件費設計や長期のコスト見通しを立てることは、実務上は慎重であるべきでしょう。


まとめ

2026年度の雇用保険料引き下げは、コロナ禍で非常対応として使われた制度を、平時の姿に戻す過程の一部です。数字だけを見ると「負担軽減」のニュースに見えますが、その背景には、コロナ特例による大きな制度の歪みと、その後始末としての引き上げ、そしてようやく始まった正常化があります。雇用保険料率の動きは、景気と政策の影響を最も端的に反映します。企業としては、短期的な数字の上下ではなく、その背後にある政策判断と制度設計を理解したうえで、労務管理や人件費戦略を考えていくことが重要です。

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