loader image

最新情報

社会保険料は正しく設定されていますか?

仙台の社労士が解説する算定基礎・標準報酬・給与計算の実務ポイント

はじめに

経営者の皆さまにとって、社会保険料の正しい設定は毎月の給与計算に欠かせない基本業務です。しかし、社会保険料は単純に給与額から直接算出するものではなく、「標準報酬月額」という基準額に基づいて決定されます。その仕組みを理解し、適切に処理しているかどうかは、従業員の将来の年金や健康保険給付に直結する問題です。特に10月は、7月に提出した算定基礎届の結果が反映され、実際に給与から控除される社会保険料に変化が現れる月です。つまり、この時期は「正しく処理ができていたか」を確認する重要な節目だと言えます。


算定基礎の結果はいつから反映されるのか

算定基礎届(定時決定)は、毎年7月に提出します。このときの対象は4月から6月の報酬であり、その平均から標準報酬月額を決定します。決定された標準報酬月額は、9月分の社会保険料から適用されることになっています。ただし、実務上の給与計算においては「9月分の保険料」を10月支給の給与から控除するため、会社や従業員が実際に「金額が変わった」と気づくのは10月の給与明細を見たときです。
このタイミングで、標準報酬が正しく設定されているか、算定基礎での集計に誤りがなかったかをあらためて確認することが大切です。

標準報酬月額の詳細は日本年金機構の公式サイトでも解説されています
標準報酬月額とは(日本年金機構)


標準報酬月額と随時改定の重要性

標準報酬月額は年1回の算定基礎で決定されますが、それだけで完結するわけではありません。昇給や降給、役職手当や資格手当、通勤手当などの固定的賃金が変更された場合には「随時改定(月額変更届)」を行う必要があります。随時改定では、賃金が変動した月を含む3か月間の平均を算出し、その結果が従前の標準報酬と比べて2等級以上違う場合に標準報酬を改定します。これを怠ると、実際の給与水準に合わない保険料を払い続けることになり、従業員の将来の年金額や健康保険給付の計算に不具合が生じてしまいます。


保険料率の確認

標準報酬月額と並んで大切なのが、保険料率の確認です。健康保険料率は都道府県ごとに異なり、協会けんぽ宮城支部の料率を必ず参照する必要があります。しかも、料率は毎年改定されます。給与計算システムやExcelを使用している事業所では、最新料率への更新を忘れてしまうケースが少なくありません。誤った料率で計算すると、会社が負担する保険料も従業員が控除される保険料も不正確になります。後から修正を求められると、数か月分の再計算や差額調整を行う必要があり、事務負担が増えるだけでなく、従業員からの信頼を損なうリスクもあります。


適切に処理しない場合のリスク

算定基礎や随時改定を正しく処理しなかった場合、次のようなリスクが生じます。まず、従業員にとっては将来の年金や保険給付額が本来よりも低く計算されてしまう恐れがあります。例えば、実際の給与水準よりも低い標準報酬で処理していた場合、出産手当金や傷病手当金の給付額が少なくなってしまうのです。これは従業員にとって不利益であり、会社に対する不満やトラブルにつながりかねません。次に、会社側にとっても監督署や年金事務所の調査時に指摘を受け、過去分の訂正届や追徴納付を求められるリスクがあります。場合によっては遡って計算し直さなければならず、大きな事務負担になるだけでなく、社会的な信用を損なう恐れもあります。つまり、社会保険料の設定は「単なる事務処理」ではなく、従業員と会社双方の安心と信頼を守るための根幹業務なのです。


短時間労働者への適用拡大もあわせて確認

短時間労働者への社会保険適用拡大にも注意が必要です。週20時間以上勤務し、月額賃金が8.8万円以上あるなどの要件を満たす場合、従業員数51人以上の企業では原則として加入義務が発生します。算定基礎が反映されるこのタイミングで、パートやアルバイトの適用漏れがないかも確認しておくべきです。


まとめ

算定基礎の結果は9月分から反映され、給与計算上は10月の支給分から実際に控除額に反映されます。標準報酬月額や随時改定、最新料率の適用を正しく処理していなければ、従業員に不利益が生じ、会社にとっても調査対応や追徴といったリスクを抱えることになります。経営者にとって、この時期は社会保険料設定の妥当性を点検する絶好の機会です。もし少しでも不安を感じるようであれば、顧問社労士や専門家に相談し、正しい処理ができているかどうかを確認しておくことを強くお勧めします。

タイトルとURLをコピーしました