
東京都の小池百合子知事は、2025年12月25日の共同通信インタビューで、介護離職対策を一段と強化する方針を明らかにしました。ポイントは明確で、「介護休業取得を後押しする奨励金の増額」です。一定の条件を満たした中小企業を対象に、これまで最大105万円だった支給額を、最大145万円へと拡充する考えが示されました。団塊世代がすべて75歳以上となり、働きながら介護を担う「ビジネスケアラー」が急増する中、管理職クラスの離職が現実の経営リスクになっている。この問題意識が、今回の増額の背景にあります。
介護休業取得応援奨励金とは何か
本奨励金は、東京都と(公財)東京しごと財団が連携し、介護休業を取得しやすい職場づくりと就業継続を進める都内中小企業を支援する制度です。単に「休ませたら支給」ではなく、法を上回る制度整備と原職復帰後の継続雇用までを一体で評価する点に特徴があります。対象となるのは、都内で事業を営み、常時雇用する従業員が2人以上かつ6か月以上継続雇用している中小企業等(従業員300人以下)です。対象従業員は、都内勤務の雇用保険被保険者で、合計15日以上の介護休業(有給の介護休暇を含む)を取得し、原職復帰後3か月以上継続して雇用されていることが求められます。
「増額」の中身と評価される取組
奨励金の基本額は、介護休業の取得日数に応じて設定されています。合計15日の取得で27.5万円、31日以上で55万円です。ここに、職場環境整備要件と加算となる取組が重なります。職場環境整備要件では、育児・介護休業法を上回る内容を、令和7年4月1日以降に就業規則へ整備していることが必要です。たとえば、介護休業期間の延長、取得回数の上乗せ、介護休暇日数の拡充、時間単位の介護休暇(中抜け可)の導入などが評価対象になります。さらに今回の制度で重要なのが、「介護する本人」だけでなく、支える同僚への配慮です。同僚への応援評価・表彰制度や応援手当の支給、そして介護休業応援プランシートの作成といった取組を行うことで加算が認められます。従来は最大105万円でしたが、ここに増額措置が加わり、最大145万円となる見込みです。単なる福利厚生ではなく、職場全体で介護を支える文化づくりが正当に評価される設計だと言えます。
社労士の視点からこの奨励金を「取れる会社」と「逃す会社」の差
実務上、最も多い不支給理由は「制度はあるが、就業規則に反映されていない」「電子申請後の控え書類が不適切」といった形式面の不備です。本奨励金では、電子申請の場合でも「提出完了画面」では足りず、申請書控えのダウンロードが必須と明記されています。ここを誤ると、どれだけ実態が伴っていても不支給になります。また、介護休業は突発的に発生するケースが多く、事後対応では間に合わないことが少なくありません。増額が打ち出された今こそ、先回りして就業規則を整備し、応援プランの雛形まで用意しておく企業が、確実に制度を活用できます。
まとめ
今回の最大145万円への拡充は、単なる金額アップではありません。東京都が企業に対し、「介護離職を防ぐことは経営課題であり、社会的責任でもある」という明確なメッセージを発していると、社労士として受け止めています。介護は一部の人の問題ではなく、どの企業にも起こり得る経営リスクです。奨励金の増額という追い風を活かし、制度整備と職場文化の両面から、介護と仕事の両立に本気で取り組む企業が、これから選ばれていくことになるでしょう。
この介護休業取得応援奨励金も含めて、助成金、補助金および奨励金の相談は東京虎ノ門・仙台に事務所のある社会保険労務士法人ブレインズまで遠慮なくご相談下さい。



