外来初診、多くの施設で6月から190円増 物価・賃上げ分上乗せ(朝日新聞) – Yahoo!ニュース
2026年度の診療報酬改定について、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会が答申を行ったと報じられました。今回の改定は、物価高騰と医療現場の賃上げへの対応を明確に打ち出し、診療報酬本体を3.09%引き上げるという、近年では例を見ない規模となっています。報道では「初診190円増」という数字が強調されていますが、その中身を丁寧に読み解く必要があります。
なぜ診療報酬が大幅に引き上げられるのか
今回の改定の背景にあるのは、医療機関の経営悪化です。エネルギー価格や医療材料費の高騰、人件費の上昇が続く中、多くの病院が赤字経営に陥っているとされています。こうした状況を受け、政府は2026年度改定で診療報酬の「本体部分」を3.09%引き上げる方針を決定しました。これは約30年ぶりの高水準です。この引き上げ分は、単なる収入増ではなく、物価上昇への対応と医療従事者の賃上げ原資の確保を目的としています。特に看護助手や事務職員を含めた賃金引き上げを支援することが明確に打ち出されています。つまり今回の改定は、医療サービスの対価を上げるというよりも、医療提供体制を維持するための政策的改定と位置づけるべきものです。
初診料・再診料はどう変わるのか
報道によれば、外来の初診料は2910円が据え置きとされ、その上で新設される「物価対応料」が20円加算されます。さらに、医療機関が賃上げに取り組む場合に算定できる「ベースアップ評価料」が拡充され、既に導入している医療機関では初診で170円、再診で40円が上乗せされる見通しです。この結果、一般的な診療所で初診を受けた場合、2910円に物価対応料20円と評価料170円が加算され、合計190円の増額となります。3割負担の患者であれば、窓口での自己負担は約57円増える計算です。再診では70円程度の増額となり、3割負担で約21円の増加となります。ただし重要なのは、ベースアップ評価料は任意算定であるという点です。すべての医療機関が同額を上乗せするわけではなく、算定状況によって実際の支払額は異なります。数字だけが一人歩きすると誤解を生みかねません。
患者負担と医療現場の持続可能性
今回の改定では、外来だけでなく入院分野でも見直しが行われています。入院基本料の引き上げに加え、入院時の食費は1食あたり40円、光熱水費は1日あたり60円引き上げられます。物価高騰が医療機関のコストを押し上げている現実を反映した措置です。厚生労働省は、この改定によって毎年3%台の賃上げを支援できるとしています。しかし、物価上昇が続けば、今回の引き上げ分が実質的に相殺される可能性もあります。また、患者負担増が受診抑制につながらないかという視点も欠かせません。報道を受けて議論が広がるのは当然ですが、今回の改定は「医療費が上がる」という単純な話ではなく、医療従事者の処遇改善と医療体制維持のための制度設計のように考えます。十分かどうかを判断するには、今後の賃上げ実績や医療機関の経営状況を注視する必要があるように考えます。今回の診療報酬改定は、医療と社会保障の持続可能性をめぐる大きな転換点といえるではないでしょうか。



