
2026年4月2日の報道によれば、はま寿司は埼玉県内の店舗で、アルバイトの労働時間の一部を切り捨てて賃金未払いが生じていたとして、行田労働基準監督署から是正勧告を受けました。報道では、出勤の打刻時間が15分刻みで、数分遅刻した場合に労働時間の一部がカットされていたとされ、会社側は是正勧告を受けたことを認めたうえで、未払い分の支払いに応じる方針を示しています。
労基法24条は「働いた分を全額払うこと」
この問題を法的に見ると、中心になるのは労働基準法24条です。24条は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないという原則を定めています。実務では「給料日を決めて払う条文」とだけ理解されがちですが、それでは不十分です。厚生労働省も、24条について、既に働いた分の賃金は当然に支払われなければならないと説明しており、実労働時間があるのにその一部を賃金計算から外す運用は、まさにこの全額払い原則に触れる問題です。ここで重要なのは、「15分単位のシステムを使っていること」自体が直ちに違法なのではなく、「日ごとの実労働時間を切り捨て、その切り捨てた時間に対応する賃金を払っていないこと」が違法評価につながるという点です。厚生労働省系の資料では、1日ごとに一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨てて賃金を支払わないことは、労働基準法違反になると明示されています。さらに、日ごとの端数処理はできず、認められるのは1か月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各合計時間についての限定的な処理にすぎないことも示されています。この整理を実務に引きつけると、たとえば5分遅刻した社員について、働かなかった5分相当の賃金を控除すること自体は、実際に労務提供のなかった部分に対応するものとして説明できます。しかし、5分の遅刻を理由に15分や30分単位で賃金を引くと、働かなかった時間を超えて控除することになり、24条の全額払い原則に抵触します。昭和63年3月14日基発150号でも、5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットするような処理は違法であると整理されています。つまり、今回のような「15分刻みだから」「システム上そうなっているから」という説明は、法的な免罪符にはなりません。
会社が見落としやすい労基法91条と37条
会社側が「これは遅刻に対するペナルティだ」と考えることがありますが、そこにも大きな落とし穴があります。実労働時間に対応する賃金控除を超えて減額するなら、それは単なる賃金計算ではなく「減給の制裁」の問題になります。そして減給の制裁は、就業規則上の根拠が必要であるうえ、労働基準法91条により、1回の額が平均賃金1日分の半額を超えてはならず、総額も1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないという強い制限を受けます。したがって、遅刻のたびに機械的に大きく控除する運用は、24条だけでなく91条の観点からも危ういのです。さらに、切り捨てられた時間が時間外労働や深夜労働にかかっている場合には、問題は通常賃金の不足では終わりません。労働基準法37条は、法定時間外労働や休日労働、深夜労働について割増賃金の支払いを求めており、月60時間超の時間外労働については5割以上の率で計算した割増賃金が必要です。もし本来カウントされるべき数分、数十分が切り捨てられていれば、通常賃金だけでなく割増賃金も不足する可能性があります。少しの丸め処理のつもりが、未払い残業代の問題にそのまま広がるのはこのためです。社労士の視点から見ると、本当に怖いのは、違法なルールが就業規則に明記されているケースよりも、現場の運用がなんとなく続いているケースです。厚生労働省のガイドラインでは、使用者は労働日ごとの始業・終業時刻を確認し記録する責務があり、その把握は、原則として現認か、タイムカード、ICカード、PC使用時間などの客観的記録を基礎に行うべきとされています。つまり、申請単位が15分や30分であっても、法的に基準になるのは実際の始業時刻と終業時刻です。今回の是正勧告は、外食産業に限らず、パート・アルバイトを多く使う会社すべてに対して、勤怠システムの設定、遅刻控除の考え方、残業申請の単位を総点検すべきだと警鐘を鳴らしているといえるでしょう。
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