
29年春入社からのルール再検討を冷静に読む
政府は、2029年春入社の学生から就職活動日程(就活ルール)を見直す検討に入ったと報じられました。現行ルールでは、大学3年3月に会社説明会解禁、4年6月に採用選考解禁とされていますが、これを前倒しする案や、春休み期間を活用する案などが俎上に載っています。この動きは、朝日新聞が詳報しており、政府・大学・経済界の間で「実効性ある見直し」を模索する方針が共有されているとされています。今回の論点の中心はあくまで「就活日程の見直し検討」です。本稿では、その検討がなぜ生じたのか、そして日程を動かすことで何が起き、何が起きないのかを整理します。
就活日程見直しが検討される背景
建前としてのルールが機能していない現実
政府が日程見直しに踏み込んだ最大の理由は、現行の就活ルールが実態とかけ離れている点にあります。建前では4年生6月が選考解禁ですが、実際にはそれ以前に説明会・選考・内々定出しを行う企業が多数存在しています。この「守られていないルール」を形式的に維持し続けることへの違和感が、今回の見直し検討の出発点です。ルールを実態に合わせて前倒しすれば、建前と現実の乖離が縮まるのではないか、という発想自体は理解できます。
データで見る就活日程の現実
すでに前倒しは終わっている
しかし、就活日程を前倒しすることで本当に状況が改善するのかは慎重に考える必要があります。リクルート就職みらい研究所の調査によれば、2025年卒において、企業が内定・内々定を出した時期は、4年生5月以前が約8割に達しています。この数字が示しているのは、「前倒しが進んでいる」という段階をすでに通過し、就活日程ルールそのものが企業行動を規律していないという現実です。1か月程度の前倒しを制度として定めたところで、企業の採用行動が根本から変わる可能性は高くありません。
就活日程見直しが抱える構造的な限界
学業との関係は改善されるのか
就活日程見直しの議論で避けて通れないのが、学業との関係です。大学の教育現場では、3年後期から4年にかけて、研究・実験・実習・卒業論文といった学業上の山場を迎えます。日程を前倒しすればするほど、これらに正面から取り組む学生ほど選考に参加しづらくなる構造は変わりません。結果として、就活日程の見直しは「実態に合わせる」どころか、学業を優先した学生が不利になる状態を固定化する可能性もあります。
就活日程見直しでは解消しない疲弊
学生と企業の双方に起きていること
現在の就職活動は、単に早まっているだけではありません。活動期間が長期化し、ピークが分散し、学生も企業も終わりが見えない状態に置かれています。学生側では精神的負担や生活費の問題が顕在化し、企業側でも内定辞退を前提とした採用活動が常態化しています。このような状況は、就活日程をどう設定するかという問題とは別次元で生じています。日程を見直すだけでは、学生・企業双方の疲弊を止める効果は限定的と言わざるを得ません。
社労士の視点から見る就活日程見直し検討
社会保険労務士として採用実務に関わる立場から見ると、今回の就活日程見直し検討は、「ルールをどう動かすか」という技術的な議論に寄り過ぎている印象があります。現行ルールが法的拘束力を持たない以上、日程を調整しても遵守されなければ同じ問題が繰り返されます。就活日程の見直しは、それ自体が目的ではありません。本来は、大学教育と採用活動をどう両立させるのか、という前提条件の整理が不可欠と考えます。
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