
政府は2024年12月23日、在留資格「特定技能」と、2027年4月から始まる新制度「育成就労」について、2028年度末までの外国人労働者の受け入れ上限を合計123万1,900人とする案を示しました。この数字だけを見ると大幅な増加に見えますが、結論から言えば、外国人労働者が急増することを前提とした方針ではありません。
上限123万人の中身はどうなっているのか
今回の上限は、すでに運用されている特定技能制度と、新たに導入される育成就労制度を合算したものです。特定技能については、2026年度からの3年間で約80万人規模が想定されていますが、これは過去に示されていた見込みよりも、AI活用などの生産性向上を織り込んだ結果、人数が抑制されています。育成就労は、技能実習制度に代わる新制度として2027年4月から始まり、未熟練の外国人材を一定期間育成し、長期就労が可能な特定技能へつなげることを目的としています。政府自身も、今回の数字は「受け入れ可能な最大値」であり、実際の受け入れ人数がこの水準まで一気に増えることは想定していないと説明しています。
技能実習廃止と制度転換の意味
技能実習制度は2027年4月に廃止されます。長時間労働や賃金不払い、転職できない構造などが問題視されてきたためです。育成就労では、一定期間就労した後、同一業種内での転籍が可能とされ、労働者保護の仕組みが明確になります。出入国在留管理庁によれば、現在の技能実習生は約45万人ですが、育成就労はそれより小規模な制度設計になるとされています。ここからも、「外国人労働者を大量に増やす」政策ではないことが読み取れます。
社労士の視点で見た実務への影響
今回の方針で企業に影響が出るのは、人数そのものよりも運用面です。転籍が前提となることで、定着しない外国人材が増える可能性があり、処遇や労働条件の設計がこれまで以上に重要になります。また、日本人労働者との均等待遇、長時間労働の是正、割増賃金の管理など、従来から問題になりやすい点について、より厳格な対応が求められます。2027年4月は制度上の大きな区切りになります。外国人雇用を行っている、あるいは検討している企業は、直前対応ではなく、今の段階から労務管理の見直しを進める必要があります。
社労士としての整理
受け入れ上限123万人という数字は、外国人労働者の急増を示すものではなく、人手不足分野を限定的に補完しつつ、日本人雇用への影響を抑えるための「上限管理」の結果です。今回の制度改正は、人数の話ではなく、外国人労働者をどう扱うかという労務管理の質が問われる局面に入ったと見るべきでしょう。



