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2026年度 協会けんぽ保険料率の見通し

2026(令和8)年度政府予算案を踏まえた収支見込みについて(概要) | お知らせ | 全国健康保険協会

政府予算案を踏まえた収支見込みから読み解く影響

2026年1月5日、全国健康保険協会(協会けんぽ)から「2026(令和8)年度政府予算案を踏まえた収支見込みについて(概要)」が公表されました。今回示された内容は、今年の通常国会に提出される政府予算案を前提にした試算であり、現時点では「正式決定」ではありません。ただし、毎年の流れを踏まえると、ここで示された保険料率は今後の実務を考えるうえで極めて重要な指標となります。本記事では、2026年度の協会けんぽの収支見込みと、それに基づく各保険料率の予定について、社労士の視点から整理します。


2026年度の健康保険料率は「平均9.9%」へ

まず注目すべきは、健康保険料率です。2025年度の平均保険料率は10.0%でしたが、2026年度は9.9%と、0.1%ポイント引き下げられる見通しが示されました。わずかな数字の差に見えますが、企業・従業員双方にとっては確実に負担感の変化を伴う改定です。もっとも、今回の引下げは「医療費が減ったから」という単純な話ではありません。協会けんぽの2026年度(医療分)の収支見込みを見ると、その構造がよく分かります。


医療分の収支見込み

2026年度の医療分について、協会けんぽは次のような収支を見込んでいます。収入の総額は約12兆3,979億円、支出の総額は約11兆8,841億円。その結果、単年度の収支差は約5,137億円の黒字となる見込みです。一見すると「安定している」ようにも見えますが、内訳を見ると注意が必要です。まず収入面では、平均保険料率を10.0%から9.9%へ引き下げることにより、保険料率そのものは減収要因となっています。それにもかかわらず収入が増える見込みとなっているのは、被保険者の標準報酬月額が全体として上昇していることが大きな要因です。つまり、「料率は下がるが、賃金上昇により保険料総額は増える」という構造が続いている、ということになります。一方、支出面では、2025年度の決算見込みから約1,951億円の増加が見込まれています。主な要因は、加入者一人当たりの医療給付費の増加です。高齢化、医療の高度化、物価上昇。これらの要素が重なり、医療費は引き続き増加基調にあることが、今回の数字からも明確に読み取れます。


介護保険料率は1.62%へ引き上げ

次に、40歳以上の被保険者が対象となる介護保険料率です。

2025年度は1.59%でしたが、2026年度は1.62%へと引き上げられる見込みです。引き上げ幅は0.03%ポイントと小さく見えますが、こちらも継続的な上昇傾向の一環といえます。今回の引き上げ理由として示されているのは、前年度末の剰余金が、2025年度の料率設定時よりも小さくなる見込みであることです。介護分野については、制度上も給付増が避けられず、「剰余金で何とか抑える」という運営が年々難しくなっている現実が透けて見えます。


2026年4月から新設「子ども・子育て支援金率」

2026年度でもう一つ大きなポイントが、子ども・子育て支援金制度の開始です。この制度は2026年4月からスタートし、協会けんぽでは支援金率0.23%が設定される予定です。国から示された「実務上一律の支援金率」を踏まえた数字であり、健康保険料とは別枠で負担が生じます。名称は「支援金」ですが、
実務上は保険料と同様に毎月の給与から天引きされる負担となるため、従業員にとっては「社会保険料が増えた」という実感を持たれやすい点には注意が必要です。

企業側としても、2026年4月以降は社会保険料控除額、給与明細の表示、従業員からの問い合わせ対応
といった実務対応が確実に増えていきます。


今後のスケジュールと実務上の注意点

今回公表された内容は、あくまで政府予算案を前提とした見込みです。今後、通常国会で政府予算が成立した後、協会けんぽの保険料率が正式決定され、その後に正式な保険料額表が公表される流れとなります。とはいえ、毎年の実務経験から見ると、ここで示された料率が大きく変動する可能性は高くありません。2026年度に向けては、「健康保険料率はわずかに下がるが、介護分と子ども・子育て分で総負担は増える」という構図を前提に、早めに社内説明やシミュレーションを行っておくことが重要です。


社労士からのひと言

今回の資料からは、社会保険制度が静かに、しかし確実に企業と従業員の負担を増やしている現実が読み取れます。表面的な料率の上下だけを見るのではなく、「なぜそうなっているのか」「今後どう備えるべきか」を整理しておかないと、2026年4月以降の実務で混乱が生じかねません。社会保険料の見直し、賃金設計、制度説明の方法など、少しでも不安がある場合は、早めに社会保険労務士へご相談ください。

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