
「賃金は上がっているはずなのに、生活は楽にならない」このような違和感を、多くの働く方が感じているのではないかと考えます。報道によりますと、11月の実質賃金は前年同月比2.8%減少し、11カ月連続でマイナスとなりました。一方で、名目賃金である現金給与総額は47カ月連続で上昇しています。この数字の乖離は、現在の日本経済が抱える構造的な問題を端的に示していると考えます。
賃金は上がっているのに生活が苦しい現実
毎月勤労統計調査(速報値)では、従業員5人以上の事業所における1人当たりの平均給与は31万円を超えており、表面的には賃上げが進んでいるように見えます。しかし、電気代やガス代、燃料費、食料品や日用品など、生活に直結する支出は高止まりしたままです。その結果、物価変動を考慮した実質賃金は下がり続け、家計への圧迫感はむしろ強まっています。数字上の賃上げが、生活の改善につながっていない現実がここにあると考えます。厚生労働省は「物価の高い水準が続いているため、実質賃金はマイナスとなった」と説明していますが、統計上の説明と現場の生活実感との間には、大きな隔たりがあると考えます。
賃上げを企業だけに求める政策の限界
政府は成長戦略の柱として賃上げを掲げていますが、現場の実態を見る限り、その前提はすでに限界に近づいていると考えます。特に中小企業では、人件費の上昇に加え、原材料費やエネルギーコスト、物流費の増加が同時に経営を圧迫しています。価格転嫁が十分にできない業種では、賃上げは前向きな投資ではなく、経営を揺るがすリスクになりつつあります。物価高への対応を企業努力に委ねたまま、賃上げだけを求め続ける姿勢は、一方的で持続可能性に欠けると考えます。
必要なのは賃上げではなく「仕組み」を変えること
本来、賃上げと同時に進めるべきなのは、物価上昇を抑制するための政策的な対応だと考えます。エネルギー価格対策、社会保険料や間接税の負担構造の見直し、為替の安定化など、国にしか担えない役割は数多く存在します。賃金だけを引き上げさせ、コスト上昇は市場任せにする政策では、実質賃金の回復は見込めません。実質賃金が長期にわたりマイナスで推移している現状は、努力や我慢に依存した対策の限界を示していると考えます。名目賃金の上昇だけでは生活は守れず、仕組みそのものを見直さなければ、実感ある改善にはつながらないと考えます。実質賃金11カ月連続マイナスという結果は、日本経済が次の段階へ進むべき局面にあることを示す警鐘であり、賃上げ一辺倒から脱却し、構造全体を見直す取り組みが不可欠であると考えます。
仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ



