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障害者施設における虐待が過去最多「再発する施設」が示す構造的問題

障害者施設の虐待、過去最多1267件 うち23%は過去にも(福祉新聞) – Yahoo!ニュース

厚生労働省が2024年12月に公表した障害者虐待防止法に基づく調査結果によると、障害者福祉施設職員による虐待と判断された件数は1267件と、制度施行後で最多となりました。注目すべきは件数の多さだけではありません。約4件に1件が「過去にも虐待が起きていた施設」であり、さらに一部は改善勧告や命令を受けた後にも再発しているという事実です。これは「一部の問題職員による不祥事」では説明がつきません。労務管理・人材育成・組織運営の欠陥が、構造的に虐待を生み続けていることを示しています。


虐待はなぜ繰り返されるのか

今回の統計では、虐待の理由として教育・知識・介護技術の不足、倫理観や理念の欠如、職員のストレスや感情コントロールの問題が上位に挙げられています。ここで重要なのは、これらはいずれも個人資質の問題で終わらせてはいけないという点です。例えば、介護技術や支援スキルの不足は、体系的な研修制度があれば防げるはずです。倫理観の欠如も、理念の共有や日常的なマネジメントが機能していれば顕在化しにくいものです。ストレスや感情コントロールの問題に至っては、人員配置、シフト設計、相談体制といった労務管理の影響を強く受けます。実際、過去の刑事事件化した事例や行政処分事例を見ても、「慢性的な人手不足」「管理者が現場に不在」「注意・指導が口頭のみで記録がない」といった共通点が繰り返し指摘されています。つまり、虐待は突発的に起きるのではなく、予兆を放置した結果として起きているのです。


他の事例に見る共通点

これまで各地で問題となった障害者施設の虐待事案を振り返ると、共通しているのは次の点です。
現場では以前から「乱暴な言動」「威圧的な対応」「不適切な支援」が見られていたにもかかわらず、正式な指導記録や是正措置が取られていなかった。管理者は「人手不足だから」「辞められると困るから」と対応を先送りにしていた。結果として行為がエスカレートし、内部告発や通報をきっかけに表面化している。社労士の立場から見ると、これは懲戒・指導・配置転換といった人事労務上の選択肢を、適切に使えていない状態です。就業規則はあっても、実際には運用されておらず、「指導したつもり」で終わっているケースが非常に多く見受けられます。


社労士視点での本質的な再発防止策

虐待防止というと、倫理研修やスローガンの掲示で終わってしまいがちですが、それだけでは不十分です。本当に必要なのは、制度としての予防策です。具体的には、不適切行為が疑われる段階での報告ルートを明確にし、記録を残す仕組みを作ること。口頭注意で終わらせず、業務改善指示書など文書による是正プロセスを確立すること。管理者が「感覚」で判断せず、就業規則と過去事例に基づいて対応できる体制を整えること。さらに、職員のストレス要因を把握し、労働時間・人員配置・休暇取得といった労務面からの改善を行うこと。これらはすべて、労務管理の領域です。虐待防止は「福祉・倫理」の問題であると同時に、明確に「労務リスク管理」の問題でもあります。


まとめ

障害者支援の現場は、強い使命感と善意に支えられてきました。しかし、善意だけでは組織は守れません。今回の統計が示しているのは、「問題のある職員がいる施設」ではなく、「問題を是正できない組織」が一定数存在しているという現実です。虐待を未然に防ぎ、再発を防止するためには、理念と同時に制度が必要です。社労士としては、就業規則、指導・懲戒の運用、管理者教育、労務相談体制の整備を通じて、現場を守る支援こそが重要だと強く感じます。「起きてから対応する」のではなく、「起きる前に止める」。今こそ、障害者施設における労務管理の在り方が、真正面から問われているように感じます。

仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズ

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