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図書館での暴言事件が示す「カスハラ対策義務化」の制度的意味

カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介 | 政府広報オンライン

福岡市の公共施設で、司書に対して公然と暴言を浴びせた利用者が侮辱罪で逮捕された事件は、単なるマナー違反や一過性のトラブルではありません。この事案が持つ本質的な意味は、カスタマーハラスメント対策が、すでに「法制度として職場に実装すべき段階」に入っていることを、極めて分かりやすく示した点にあります。特に見逃してはならないのは、被害を受けた司書が事件後に退職しているという事実です。ここに、制度対応が不十分な職場が直面するリスクが凝縮されています。

図書施設でカスハラか 「このアホ」侮辱容疑で男を逮捕、司書は退職(朝日新聞) – Yahoo!ニュース

改正労働施策総合推進法でカスハラはどう位置付けられたのか

2025年6月に成立した改正労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメント対策が、パワハラやセクハラと同様に「雇用管理上の措置義務」として明確に位置付けられました。これは極めて大きな転換です。従来、カスハラ対策は「企業の自主的な取組」「努力目標」として扱われてきました。しかし改正法では、職場において顧客や利用者など事業に関係する者の言動により、社会通念上許容される範囲を超えて労働者の就業環境が害される場合、使用者はそれを防止・対応するための体制を整えていなければならないと整理されています。ここで重要なのは、法律がカスハラを「行為者の問題」ではなく、「職場環境の問題」として捉えている点です。暴言を吐いた本人が悪い、で終わる話ではありません。その言動が職場で発生した以上、使用者がどのような備えをしていたかが問われます。

法律が求めている「カスハラ対策の中身」とは何か

改正法は、具体的な対応内容を政省令や指針に委ねていますが、すでに示されている国の考え方から、制度の骨格は明確に読み取れます。

第一に求められるのは、カスハラを許容しないという基本方針を、組織として明確にすることです。これはスローガンの話ではなく、就業規則や内部ルール、現場運用に落とし込まれているかが問われます。「お客様だから仕方がない」「公共施設だから我慢する」という発想を、制度として否定できていなければ、義務を果たしているとは言えません。

第二に、実際に被害が発生した場合の対応体制です。現場職員が一人で対応を抱え込まず、管理職や責任者が即座に介入できる仕組みがあるか、証拠を適切に保全し、必要に応じて利用制限や警察対応まで判断できるか。これらはすべて、雇用管理の一部として位置付けられます。

第三に、被害を受けた労働者への事後的な配慮です。カスハラ対策は、その場を収めれば終わりではありません。精神的ダメージを受けた職員が、その後も安心して働ける状態を維持できて初めて、「就業環境を害していない」と評価されます。結果として退職に至っている場合、制度対応が十分だったとは言い難くなります。

今回の事件で司書が職を辞している点は、まさにこの制度趣旨と真正面から向き合う必要がある部分です。

刑事責任と雇用管理責任が同時に問われる時代

侮辱罪が厳罰化された現在、カスハラ行為は容易に刑事責任と重なります。しかし、だからといって職場側が「警察の問題」と距離を置くことはできません。暴言や威圧が発生することを想定せず、対応体制を整えていなかった場合、今度は使用者側の安全配慮義務違反が問題になります。つまり、カスハラは「客が悪い」で終わる問題ではなく、制度を整えていない職場ほどリスクが顕在化する問題です。

社労士としての結論

今回の図書館での暴言事件は、カスハラ対策義務化の「予告」ではありません。すでに始まっている制度の現実を、誰にでも分かる形で突き付けた事例です。カスハラ対策は、接客マナーの話でも、精神論でもなく、法令遵守と人材流出防止を同時に図るための雇用管理制度です。制度の中身を理解せず、「うちは大丈夫」と考えている職場ほど、同じ問題に直面すると考えます。次に起きる前に、制度として整えているか。今回の事件は、その一点を私たちに問いかけていると考えます。

ハラスメント対応は仙台・東京虎ノ門の社労士 社会保険労務士法人ブレインズまでご相談下さい。

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